interview & text by Seira Yonamine


今年で30周年を迎えるジャマイカ1のレゲエフェス『Sumfest』で行われるサウンドクラッシュへの参戦を控えジャマイカに滞在しているOGAちゃんにインタビュー

世界的に注目される大きな舞台を前に「世界が混沌としているからこそ、争うことではなく、ラスタの愛とスピリチュアリティを表現したい」と真剣な眼差しで語った。

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【OGA from JAH WORKS】

大阪の老舗レゲエサウンドシステム”JAH WORKS”所属。
一見して独特なOGAであるが、そのライフスタイルや思想に基づいて選曲は聴くもの全てを魅了する。

またレゲエサウンドシステム文化の醍醐味でもあるサウンドクラッシュシーンにおいても現在日本で最高峰と言われる”Japan Rumble”の2018年度Champion でもあり、世界最高峰の舞台とも言われている“WORLD CLASH”でも3位になる。その後イタリアでもタイトルを獲得。
日本国内のみならず海外での活動経歴も豊富で、JAMAICAやNY,CANADAやヨーロッパでの世界ツアーも成功させている。

また毎週水曜日にツイッターライブにて放送している”OGA WORKS RADIO”略してオガラジはLIVE放送とアーカイブ放送合わせて毎週延べ5000人以上が視聴する大人気番組に成長。
世界が認めた日本を代表するトップセレクター!

Twitter:https://twitter.com/JahOGAworks

Instagram:https://www.instagram.com/ogajahworks/



●クラッシュに参戦することになった経緯を教えてください。

OGA:もともとは、2020年にオファーをもらっていたのがコロナ禍で中止になり、2022年にサンフェス自体は復活したんやけど、その年は運営予算の兼ね合いで出場していなくて、今年ついに実現しました。でも、この2、3年の間で自分を見つめ直す時間が多かったから、ゆっくり準備できました。ありがたいです。

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●コロナで世界的にロックダウンが起こったことで、各々が自然と内省的になる期間がありましたよね。その期間、OGAちゃんはどう過ごされていたのでしょうか?

OGA:まず、オンライン英会話を始めて、シンプルに語学力とヒアリング力が伸びました。ほぼ毎日、できる限り外国の先生と英語を喋っていました。そのおかげで、ジャマイカのラジオで流れるニュースとかの理解力が上がりました。

あとは、マインドの面でも、さらに冷静になったかな。2019年ぐらいの時に、「Less is More」という言葉にはまって、そっからマインドフルネスを勉強しだして、いろんな本を読んだりとかしていて。以前は、クラッシュの日が近くなってきたり、クラッシュのことを考えたら、やっぱ気持ちが高ぶるっていうか、興奮状態になっててんけど。今回は、これがかなり少なくて。こんなに落ち着いていていいんかな?っていうぐらい、落ち着いてて(笑)焦りや恐怖、不安みたいなんがなくなってる。「楽しめてる」っていうか。これは、単に2、3年年齢を重ねたからそうなったっていうよりかは、日々のエクササイズや瞑想、ヨガトレーニングがかなりマインドと直結してるなと感じています。


●OGAちゃんの内から沸き上がる、静かなる情熱のエネルギー、ポジティブでもないネガティブでもない、ニュートラル・ポイントのような雰囲気を感じています。

OGA:ありがとうございます。
サンフェスっていう大きいクラッシュが目標にあったから、それを身につけたかったんです。今の俺は、いろんな面でベストコンディションだと思います。

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●最高ですね。では、対戦サウンドについて教えてください。

OGA:BASS ODYSSEYは前回のチャンピオンという立場でディフェンディング出場して、去年のワールド・クラッシュのチャンピオンのCODE RED、ジャムロック・クルーズのクラッシュのチャンピオンでアフリカのサウンド、DYNAMQ。あと、マグナム・クラッシュの今年のチャンピオンが対戦メンツです。


●チャンピオンだらけですね!

OGA:はい。全サウンド、完全に今の第一線。これ以上のメンツはいないんじゃないかな。世界の全サウンドマンが聴く、全部の音源は聴かなかったとしても、ちょっとは絶対耳にする戦いになるだろうから、こんな機会はないと思うし、ラッキーです。嬉しいです。


●さまざまなチャンピオンがいる中で、OGAちゃんのスタイル、魅力、強みとなるポイントで戦っていくっていうのが、すごく見どころに感じています。

OGA:ヤーマン。実は、サンフェスはジャマイカの観光局や政府、国を挙げて開催している大きいイベントなので、全体的に「バッドワード禁止」なんです。例えば、ダブに「ボンラボクラ」とかバッドワードが入っていたらその部分を消したりする編集で時間がかかったり、昔のダブを(バッドワードが入っているのを)気付かずかけちゃって失格になるサウンドとかいたり。でも、逆に俺らはもともとそういうダブプレートを取ってこなかったり、そういう戦い方でやってこなかったから、めっちゃハマるんちゃう?ってなっています。

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●それこそ、2018年に開催され、OGAちゃんが優勝した『ジャパン・ランブル 2018』で、バッドワードが禁止されていたわけではないのに、「俺はバッドワードは使わへん!」「俺は俺のやり方でいく、俺のやり方で勝つ!」と仰っていたのが印象的でした。クラッシュといえば、「音の戦い・殺し合い」と称され、ダブもMCもバッドワードが炸裂し、サウンド同士のプライドにかけた熱気・気迫が溢れる催し物だと思いますが。OGAちゃんにとって、クラッシュの極意はなんでしょうか?

OGA:大きい要素を捉えたら、自分自身に課題を作って修行・成長をする場、自分の存在を証明する場、夢を与える場です。それが、自分がクラッシュに挑戦し続ける大きな要素です。でも、結果を残し実績が伴うことで生まれる爆発力の重要さも痛感しているので、もっと「結果」に貪欲になろうかなと。やるからにはタイトルとります。でも、それよりも大事なのは、さっき言った3つの要素です。

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●「勝つこと」にコミットするようになったけど、「結果」に執着を感じないのがOGAちゃんらしいなと感じました。

OGA:ありがとうございます。確かに執着はしてないかも。その感じが「甘い!」っていう人ももちろんいると思うけど。「自分のやりたいこと」っていうところに対してフォーカスしたら、結果に執着するのはやりたいことではないかな。

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●勝負の世界で結果に執着をしすぎると抵抗波動が生まれて、実力が発揮できずに負けてしまうこともあるそうです。執着を手放して、本当に「今ここ」に集中して、全力で楽しむことで真の力を発揮できる。だから、プロのスポーツ選手だったりは、そういったマインドセットを実践されていたりするそうですが、そういった意味でも、OGAちゃんの「強み」を感じました。勝った後のビジョンってあったりしますか?

OGA:日本のレゲエのコミュニティやジャマイカでもそうだし、もっと大きいことをスムーズにできるようになるんじゃないかなと思っています。もっとジャマイカのアーティストを日本に呼べたり、逆にアーティストから「日本に行くなら、JAH WORKSとやりたい!OGAとやりたい、ツアー回りたい!」って、言ってくれるようになったらいいなと思って。そうしたら、もっと日本のレゲエも盛り上がるようになるし。そのためには、やっぱりもっと認知してもらわないと話にならないっていうか。さらなる、ジャマイカと日本の架け橋になるために。

それに、今の日本のシーンで、ジャパレゲが好きな人とジャマイカのレゲエが好きな人のファン層がハッキリと別れちゃっているような肌感があって……。そこを、もっと近くしたいなという思いがあります。


●それは、ジャマイカのダンスホールや音楽が日本のシーンでフィールされていないということですか?

OGA:ダンスホールを聴く人と聴かない人が別れてきているような感じがあります。でも、リラとか、そういうアーティストはみんなフィールしてるんじゃないかなと。どこのショーもソールドアウトだったし。


●ちょっと余談なんですが、今年の春に、私の知り合いのセレクターをやっている男の子が、初めてジャマイカに行ったみたいなんですが、「あまり楽しめなかった」と言っていました。ダンスホールが歌詞の内容が暴力的すぎて、フィールできなかったと。もちろん、それがダメだと言っているわけではなくて、音楽は時代・社会的背景が直結しているアートなので、バイオレンスな曲が多くリリースされる背景にはジャマイカのリアルな側面が表現されている現代アートだと思っています。ただ、ジャマイカの音楽が好きでジャマイカに行った子が「フィールしなかった」という感想も「リアル」な声だと思いました。

OGA:今、ジャマイカの音楽シーンも転換期が来てるなと感じています。
コロナ禍から世の中の混乱が続いているし、物価もどんどん上がっていくし、みんなどんどん生活が苦しくなってきて、アーティストも世界でツアーができるわけでもないし。とりあえず「もう詐欺してでもいいからお金ほしい」みたいなマインドだったと思います。それで、そうやって悪いことして、お金稼いで良い生活している人が自分のコミュニティから出てきたら、若者は憧れるだろうし。


とくに、去年から今年の頭にかけてロックダウンでパーティーもできなかった鬱憤もあるし、バッドマインドとの戦いみたいな感じで、すげえ自分の内側と悩んでる曲やったりとか、暗く攻撃的な曲が流行っていて。そんときぐらいから、ジャマイカのプロデューサーやアーティストとか、業界の人の中でも、(バイオレンスな曲が流行っている事に対して)もう全くついていけてなくて。


「ハッピーバイブスが無さすぎて、このままじゃジャマイカンミュージック自体がやばい、どんどん人が離れていく」って言ってたんです。でも、今回ジャマイカにきたら、いい感じの「ザ・今年のサマーチューン」が3~4曲あって、どれも去年みたいにグロい内容っていうのがなくて、あれ?ちょっと爽やかなってません?みたいな(笑)


●明るくなってきたんですね!

OGA:多分もう今年の頭とかに流行っていた、そういうグロい詐欺の歌とか暴力的な曲を誰も聞かなくなっていて。もちろん、コミュニティによっては流行っていたりするみたいやけど、ジャマイカ全土で考えるとかなり減ったなと思って。それに対しては肌で感じています。

正直、俺も昨年ジャマイカでの思い出の曲は一曲もない(笑)いや、一曲ぐらいはあるかな。今年はもうちょっとあるかな。もしかしたら、その子もこの夏に来ていたら、2曲ぐらいは思い出の曲になっていたはず(笑)


●(笑)

OGA:ちょっとずつ、またみんながみんなで「楽しむモード」に入ってきてるんじゃないかな。
ジャマイカ人のアーティストやプロデューサーも、コロナ禍でレコーディングもできない時期が続いて、みんな家でオンラインでレコーディングして、多分すごい暗い曲にしちゃってたと思う(笑)

今は、またみんながパーティーに集まったり、スタジオに集まったりして、「みんなで音楽をやろう!」っていうモードに入ってきてるから、意見交換もするやろうし、「ちょっと、その歌詞グロすぎひん?」みたいな意見も出てくるだろうし(笑)
ジャマイカもなんやかんややって、今は回復期にあると思います(笑)


●それに、OGAちゃんが今ここ(ジャマイカ)にいますしね。

OGA:俺がジャマイカで活躍することによって、みんなが音源聞いてみようかなとか、YouTube見てみようかなっていうので、ジャマイカに興味を持ってもらえたら嬉しいな。

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●今回のクラッシュにかけるOGAちゃんの色んな想いを感じました。そういった意味でも、OGAちゃんにとってサウンド活動の極意には「自己表現」や「自己実現」というところにあると感じました。それで、OGAちゃんが表現したいこととは、どういったものでしょうか?

OGA:お~、すごい大きい問いですね……。俺は何を表現したいんやろう……。


●私、昨夜、今日のインタビューに向けてオガラジをYouTubeで拝見させて頂いていて。OGAちゃんが声高らかに「愛だ!」と仰っていて。勝手ながらに、私はそこがOGAちゃんの表現なのかなと感じていました。それに、OGAちゃんを見ていると、なんか癒されるんです(笑)

OGA:(笑)

●OGAちゃんの祈りや愛の波動をレゲエ(音楽)を通して多くの人に伝播させているんだって感じました。例えば、OGAちゃんがバイオレンスな曲をかけたとしても、「OGAちゃん」という変換器を通して昇華されて、バイオレンスが愛に変わるんです。その波動を受け取ったみんなが自然とヒーリングされて、愛の波動が波紋のように広がって、OGAちゃんが一つの世界(ダンスホール)を築いているんだなと、ヴィジョンが浮んできました。

ラスタの祈り、癒し、愛……つまりスピリチュアリティがOGAちゃんの表現したいことなのかなと、勝手ながらに考えていました。すみません、熱くなっちゃいました。

OGA:ありがとうございます。実は、今回俺がジャマイカに来て、星羅ちゃんと同じようなことを言われて。
「今、この世の中に、俺たちラスタは何を必要とされてるんだろう?」って、俺の大好きなココナッツを売っているラスタのおっちゃんが言ってて。
今、世界中がすごい混乱してるから、特にここ数年間コンフュージョンがすご過ぎて、みんなが目の前のことに必死になりすぎて、スピリチュアリティを失ってしまって、モラルもない世界になって、暴力とか、犯罪もすごい増えてしまってて、戦争もあるし、みたいな。

そこで、やっぱり俺たちは「スピリチュアリティ」っていうのをもっと復活させ、みんなに取り戻すことが「ミッション」なんじゃないかっていう話があって、「その通りや!」ってなりました。
まさに答え合わせでした。ぼんやりとした自分、何のために音楽をやってるんだろうって、ふとしたときに考えたりとか、世の中のニュースとか見て考えていたことが全部繋がったっていうか。

今回のジャマイカ生活の中で、一番の大きい学びが「スピリチュアリティ」っていう部分。パワーワードっていうか、キーワードというか、そうやったから。うん、すごいいいです。ありがとう、星羅ちゃん。


●私の方こそ、昨日はOGAちゃんを見て癒されました。いつも愛をありがとうございます。

OGA:最近、音楽をやる上で、もうそんぐらい言い切っちゃおうと思ってて。クラッシュをやるうえでどうなんやって言われたら分からへんけど、音楽全般でいったら、俺のミッションは、やっぱりレゲエを通じてみんなに「愛」っていうものをもっと認識・実感してもらえたらなと思っています。もちろん家族愛はみんな持ってるし、それとはまた違う愛を。もっともっと大きい愛。ワンラブ、スピリチュアリティ。

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●とてもかっこいいです。愛とスピリチュアリティというOGAちゃんの魅力の背景にはラスタの哲学や思想、神秘っていうものがあり、OGAちゃんという存在を通じて、ラスタって何だろう?ジャマイカって何だろう?レゲエって何だろう?と、OGAちゃんのライフスタイルを含めた在り方・表現から興味関心が湧く人が多くいるのではないかと思います。

OGA:ありがとうございます!

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●OGAちゃんは、今1ヶ月半ほど、今回のクラッシュに向けて前乗りでジャマイカに滞在されていますが、どのような1日を過ごされているのでしょうか?

OGA:ジャマイカでの生活は、スタジオワークがある日とない日があって。スタジオワークがない日は、大体朝に起きて、軽く一服して、ヨガを15分ぐらいします。それから、朝ご飯にフルーツとコーヒー、たまにパンを食べたり。そんで、そっからちょっと家で作業します。ジャマイカの夏の太陽がすごくて10時ぐらいには暑すぎて部屋に居られない状態になるから、そっからスタジオに行くか、カフェに行ってダブを編集したり、音源を聞いたりして作戦会議をします。それから、お昼ご飯食べて、スタジオに行ったり、(スタジオが)ないときは川に行ったり。

あと、最近こっちでエアロビに出合って始めました。今年からヨガをやってて、ジャマイカでもヨガをやりたいと思って、行きつけのアイタルレストランでヨガクラスがあるジムを紹介してもらったんやけど、クラスが日曜の早朝からで、パーティーも行きたいしそれは無理やってなって。

たまたまそのジムの他のクラスでエアロビがあって、レッスンに参加したらハマっちゃって。月曜から木曜まで1時間ぶっ通しでエアロビしてます(笑)


●質問の返答が想像の上を行かれててちょっと面白いです(笑)

OGA:夕方はYouTubeでヨガしてピラティスしてます。


●ジャマイカでのウェルネスなライフスタイル、素敵です。

OGA:クラッシュって、1ラウンドの10分間、1人だけでずっと回して、パフォーマンスして、頭も使って、喋ってってなると、一気に体力を消耗して、すごく汗をかく作業なんです。
それに、ジャマイカも夏やし、日本とは比にならんぐらい熱くて、体力的にちょっと不安なところがあって。ジムで10分間のタイマーをセットして走ったりとかしてたけど、それよりも1時間動きっぱなしでやっている方が体力つくんちゃうと思って。エアロビをやったことで、今は自信がつきました。


●プレイ面だけじゃなく、マインドフルネスやヨガ、運動などで心技体を磨かれているんですね。

OGA:スーパー・ハードコア・クラッシュ・ファンの人が期待してこの記事を読んだときに「こいつ、ジャマイカで一体何しんてんやろ?」っていう(笑)

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●アハハ(笑)OGAちゃんの魅力たっぷりなお話が聞けて嬉しいです。
それでは、最後にクラッシュに向けての意気込みと、ファンの方へメッセージをお願いします。

OGA:世界よ、俺を待っとけ!そして、ファンのみなさん、これからもレゲエをよろしくお願いします。

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●応援しています。ありがとうございました^^