Interview & Text:TAKANE



 ダンスホール界に燦然とその名を輝かせるフィメールアーティストAKANE。クールなスタイルとは裏腹に、吐き出す言葉は超ホット。そんな彼女と今回初めての楽曲リリースとなるのが沖縄出身の実力派シンガー、DORA a.k.a.Queen Dだ。彼女たちの初めてのコラボシングル「SLAY」はイケてる女子のアティテュードがたっぷりと堪能できる1曲となっている。今回のインタビューでは楽曲制作秘話からこれからの展望まで、二人に余すところなく語っていただいた。


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●今回の楽曲「SLAY」がAKANEさんとDORAさんの初めてのコラボだと思うのですが、どういった経緯でそうなったのですか?

AKANE:前々から一緒に曲をやりたいねと話していたので、DORAがこっちに来たタイミングで一緒にスタジオに入りました。

DORA a.k.a.Queen D(以下DORA):8年前ぐらいにライブで一緒になってから曲を作ろうと言ってもらってて。自分で選んだトラックを持ってAKANEちゃんとBIG BLAZE WILDERSのスタジオに行き、DiamondNutsくんに編曲もしてもらいました。仮の録音もその日に出来たのですぐ曲は出来ましたね。


●曲を作る前のお互いの印象はどのようでしたか?

AKANE:器用なアーティストなので、プロデュースやコンセプト次第でどんな印象の曲もできそうだなと思いました。

DORA:アーティストとしての姿勢が曲に詰め込まれているし、華麗さとソリッドな部分も見え隠れする、リリックの言葉選びがカッコイイ方だなと。もちろん音楽性に関しても。


●なるほど。では曲を作った後で印象が変わった点なんかはありますか?

AKANE:印象が変わったというか、感じたところは、大きく見たところで好きなものが似ている箇所があるなあと感じました。もちろん断然に違う箇所もあるんですが(笑)。だから楽曲やそれに伴う色んな面で、とても制作しやすかったです。

DORA:私も印象が変わったというのではないですが、Trackを選んだ時の「こんな感じの曲にしたい」と思う感情や伝えたい事を、AKANEちゃんがリリックでもフロウでもバシっとキメテコラレタので「さすが!!」と思いました。


●では、楽曲の中身についてお話伺いたいと思います。まず「SLAY」の曲のコンセプトについてお聞かせください。

AKANE:丁度コロナの自粛期間とも重なり、SNSや様々な場面で自分も含め、みんな鬱憤が溜まっているなあと感じていて。そんな中でみんなを巻き込んで遊べるような楽曲が欲しいなと思っていました。なのでメロディーラインは踊れて遊びゴコロがあるように、リリックは「どんな自分も自分なのだと、今を生きる女性たちが堂々と言えるような楽曲」を意識して作りました。

DORA:コロナもあって「世の中にエナジーを!」というのと「HYDROPOLISのお二人に踊っていただいてムーブメントを起こしたい!」という所まで、AKANEちゃんと曲を作る段階で話をしてましたね。そして聴いてもらった人に「自分自身に自信を持って輝いて欲しい!!」という想いがこもってます。


●タイトルの「SLAY」ですが、どのような意味ですか?

AKANE:「イケてますわよ!」的な意味です(笑)。


●どんな点にこだわって楽曲を制作しましたか?

AKANE:グルーヴを失わないまま、言いたいことが言えているかどうかですね。

DORA:女性アーティストのコンビネーションで今までなかった楽曲にしたかったので 、音選びも含めてその狙いは叶ったと思います!


●気に入っているリリックの箇所なんかはありますか?

AKANE:全部好きです!基本自分が出した曲は全部スキなんです(笑)。気に入ってるから出している。敢えていうと「どいつもこいつも誰かの意見を気にしてI'm so bored」の箇所でしょうか!

DORA:私も同じところです。


●「SLAY」の曲のオケを選んだポイントはどんなところですか?

AKANE:さっきのDORAの話にもあったんですけど、DORAが選んできてくれたビートを、StarBwoyWorksのDiamondNutsがアレンジしてくれて。実際自分とDORAでスタジオで踊ってみたりして、踊りやすい速さを一緒に決めました(笑)。

DORA:私自身は、意表を突くような強めのTrackで歌いたいと思ってオケを選びましたね。今までの私を知ってくれているリスナーの方はビックリするだろうし、AKANEちゃんが乗ったら絶対渋いだろうと。自分自身でも女性2人で歌っている曲をこのトラックで聴きたいと思ったので。


●ジャケットの唇がセクシーですが、ジャケットのアートワークを決める際に重視していることはありますか?

AKANE:ジャケは私のファーストアルバムから一緒に創作してくれているKUさんにお願いしました。楽曲をまず聞いてもらい、コンセプトや色などは一緒に決めて後はお任せで作ってくれた感じです。いつも自分の想像の枠を超えて来てくれる、素晴らしいデザイナーさんですね。



●女性がたくさん登場するきらびやかで華やかなMVが印象的ですが、監督はどなたですか?

AKANE:阿部ナオトさんです。この方もいつも必ず自分の想像を超えて、トリッキーかつクールな映像を作ってくれるのでとても信頼している監督さんです。私生活でも仲が良いですが、見るモノの観点が面白い人だなあと、(いい意味で笑)感じます。

DORA:アイデアから撮影、そして編集までのスピード感とチームワークも素晴らしく、圧巻でした。


●MVを見る時に注目してほしい点はどこですか?

AKANE:カラフルな映像の中にシュールな映像も絶妙に混ざっていて、そこが監督さんの技だなあと。映像の中では、最後はみんな縛られているものを投げ捨てて、イケてるKicksを履いて自由になるんです。

DORA:監督のアイデアと世界観はもちろん、色んな方面で活躍されているダンサーさん、女優さんに出演していただいたのでそこも見所です。本当に監督のアイデア、チームワーク、演技、ダンスが掛け合わさった最高傑作ですね。


●確かに女の子もたくさん出てくるし、すごくキャッチーで何度も見たくなる中毒性のあるMVだと思いました。MVも含め、実際にリリースしてみての反響はいかがでしたか?

AKANE:リリース前からリリース後までの12日間、声をかけさせて頂いた全国のダンサーさん達に撮ってもらった"SlayTwerk"と "A5STEP"というダンスムービーを、SNSにアップしたんです。参加して頂いたダンサーさんたちのおかげもあって、ダンスを習っている人や現役のダンサーさんたちからの反響はとても大きかった。もちろんそれ以外のリスナーさんからも反響はありましたが、長くダンスホールという場所で歌っていると、本当にその場のダンサーさんの力はとても大きいし頼りになると思っていて。単純に踊っているダンサーさんを見るのが個人的にとても好きなんです。そしてそれを見ている周りの踊りたくてウズウズしてる人たちを見るのも好き。だからこの人たちどうやって踊らそうかって、毎回楽曲を作る時やショーの時は考えています。

DORA:もちろんダンサーさんだけではなく、アーティスト、DJ、セレクター、そしてリスナーの方からもかなり良い反響をいただいてます。全てのこの作品に関わったプロフェッショナルの方々のパワーが一つになり、結果に繋がったと思いますね。「チームワークって凄いパワーが発揮できるんだな。」とまた成長できました。そしてPushimさんがこの曲を気に入ってくださり、Remixをリリース出来たのも音楽人生でかなり印象的な出来事です。


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●今回のレゲエザイオンは「女性の時代」がテーマですので、それに関連する質問をさせていただきますね。お二人は長くダンスホールの世界でアーティストとして活動されていますが、その中で女性であることを意識することはありますか?

AKANE:以前は男尊女卑?みたいなことはありましたが、最近は逆に優しくしてくれる男性が多いので、逆にそれで女性だと意識することのが多いですね(笑)。男性と女性はどうやっても違う生き物だから、考え方において違う部分ももちろんある。そこをお互いに尊重しあえてるんだと思います。自分の事でいうと、私のショーでの衣装はSexyなものよりカジュアルな物が多いんです。それは敢えてSexyにならないように少し意識してますね。へそ曲がりと思われても仕方ないんですけど、女性らしさを前面に出してそこに注目されるより、何気ない格好で出て来てスキルで物言わせてやる!という自分への挑戦でもあります。究極の天邪鬼ですね(笑)。

DORA:普段から1人のアーティストとして接してくれるので、女性だからと自ら意識する事は私はないです。でもダンスホールにいる人達は紳士的で華麗だと思います。


ちなみに音楽に関する情報はお二人はどこから入手しているんですか?

AKANE:海外のラジオがきっかけになったり、新しいアーティストは自分でディグったりもします。今はイギリスのラッパーやアーティスト、アフリカのラッパーなどを良く聞いています。

DORA:私もサブスクで聴いたり、気になるジャンルを調べて、そのジャンルのカッコイイアーティストをディグします。最近のおすすめは、友達に教えてもらったGqom(ゴム)というジャンルがカッコイイなーと思います。


●洋邦問わず、注目しているアーティスト、コラボしたいアーティストはいますか?

AKANE:注目しているアーティストは、海外だとLittle Simz、日本だとFriday Night Plansですね!

DORA:私はコラボという意味ではTHEタイマンチーズ でLiveしたいです!




●これからのダンスホール、レゲエシーンに期待すること等あればお聞かせください。

AKANE:もっとフレッシュに、ジャマイカばかりを追うのではなく世界の音楽に目を向けたうえで、”自分”というフィルターを通してからダンスホールやレゲエを広めていけたらいいなと。みんなそうしているとは思うんですが、もっともっとそうなればいいなと感じています。

DORA:期待をするよりこれからの未来にわくわくしてます。自分達がカッコイイと思う音楽を発信し続けて、沢山のリスナーの方にそのカッコイイ音楽を広められたらと思います!


●お二人自身はダンスホールシーンにおいて、この先どういう風にやっていきたいと考えていますか?

AKANE:実は去年から、海外に長期移住をしようとVISA取得をしていましたが、コロナ禍で一旦停止になってしまいました。でもそこは変わらず取得に向けて動いていこうかと考えています。

DORA:私は色んな国のジャンルで歌ってみたいと思っているので、色んな曲をディグして作ったりしてます。


●お二人ともワールドワイドな活動も視野に入れているんですね。最後にレゲエザイオン読者にメッセージや告知などお願いします!

AKANE:面白いコラボやRemixの制作などを今しているので、リリース等、SNSでチェックしてくれたら嬉しいです!

DORA:去年の年末頃から制作していた、個性溢れるRapperとのコラボ曲が数曲リリース予定です。あと、昔からの仲間がTrackを制作しだしていて、それがまた色んなジャンルを取り入れた面白いTrackを作っているのでいい化学反応が起きる予感もしています。


●音楽に男女の垣根はないですが、個人的にも同じ女性として、お二人の絶え間なく活動を続ける姿にすごく勇気づけられてきました。これからの活動の予定もたくさんあるようですので、ますますパワーアップされていくお二人のご活躍が今後も楽しみです!本日はありがとうございました!




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【AKANE Profile】                                                   

数々のコンピレーション参加や現場での活動を重ねてきた実力派。 硬軟をあわせもつ歌声と表現でオリジナルなシンガースタイルを確立し、それまでの足跡を含めた1stオリジナルアルバム「Expression」をリリース、翌年には多彩なリディムにのって、様々な角度からダンスホールの魅力をストレートに提示した2ndアルバム「STRAIGHTER」をリリース。全国ツアーや自身初となるワンマンライブも成功させた。その活動は日本だけに留まらずジャマイカのIrie FMやZip FMを始め、海外のラジオ等でもOn Airされ、話題となった”Hold me feat. BUSY SIGNAL”を発表。その勢いのまま3rdアルバム「D」をリリース。2012年からは所属していたBUSH HUNTER MUSICを離れ、天才DEEJAY=RUDEBWOY FACE率いるMAGNUM RECORDSに移籍し、遂に2013年本格始動!2019年に4thアルバム「AkaneAMG」をドロップ。Dancehall, Reggae, HIPHOP,  R&B etc… 自身の軸となるブラックミュージックを取り入れ、時代の変化と共に、独特かつユニークに変化してゆくAKNAEの動きから目を離すな!



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【DORA a.k.a. Queen D Profile】   

日本のジャマイカ、オキナワで生を受け、聴くものすべてのココロを動かす天性の歌声を授かった彼女は幼少期からシンガーになることを決意。

その後活動の拠点を関西に移し、アンダーグラウンドシーンから絶大な支持を受ける。

2016年には日本のレゲエシーンにおいて歴史のあるBob Marley Songs Day コンテストにて優勝を果たし、初のJamaica ・NYへ渡りレコーディング。

2018年には” Sweet Mama Island” を加えた両A面のレコードをリリースし音楽ファンを魅了した。

また自身の作品のみならず、国内外問わず数々のアーティストの客演、コーラスを務め、日本のアンダーグラウンドシーンにおいて最重要シンガーの一人である。

彼女のこれからの活動に目を離せない!