text by タカネ


 

時として、音楽は医術よりも私たちを救うことがある。「音楽療法」という言葉もあるように、音に癒され、救われてきた経験は、誰しもにあるのではないだろうか。 

 新進気鋭のリディムクリエイター集団、Medical Tempoは、その名の通り、音楽の「癒しと治療」の側面を、私たちに想い起こさせる。ダブミキサーのBIG HEADとベーシストのKITANO DAIKIを中心に構成されているMedical Tempo。しかしその正体は謎に包まれたまま。2020年から関西を中心に様々なアーティストに楽曲提供を行い、生音、デジタル、ダブワイズ、あらゆる形の音楽を操りつつも、一貫して「土臭く、古く、しかし新しいレゲエ」を提供し続けている。

 今回はそんなMedical Tempoが手がけた楽曲の中でも、必聴の3曲を紹介しよう。

 




| 「M(Feat.Medical Tempo)」 ONEDER 

 

      隙間が多く温かみのあるリディム、哀愁を帯びたONEDERの歌声がチルタイムにピッタリの一曲だ。

レゲエマナーに則った裏打ちのビートから始まりつつも、徐々に細かく刻んだビートに移り変わる展開の変化も小気味良い。楽曲全体にどことなくシティポップの香りが漂うのは、シンセサイザーのメロディがそうさせるのか。ラブソングと思いきや、実は…?

 

|「Still burn it」 FU-TEN meets MedicalTempo 

 

今年の4月20日にリリースされたこの曲。

この日がレゲエファンにとってどのような意味を持つ日なのかは言わずもがな。

序盤の荒々しいパーカッションが、どことなくアフリカンミュージックを想起させる。かと思えば、サビにこっそりと仕込まれたバイブ音。携帯電話を携帯しない者のいない現代社会、この音を仕込まれては反応せざるを得ないことをMedical Tempoはお見通しか。はたまた彼らなりの揶揄か。妖艶さ漂うFU-TENの歌声とともに聴けば、極上の陶酔が得られることは間違いない。

レゲエがレベルミュージックであることを思い出させてくれる1曲である。正に荒療治。

 

|「鼻歌 Feat.Medical Tempo」R-man

 

  Medial Tempo名義での初めてのリリース曲「鼻歌」は、正当派のレゲエリディムだ。

アイリーなトロンボーンの音色にR-manのゆったりとしたボーカルが乗れば、そこはモベイかネグリルか…...コロナが猛威を振るい、社会が殺伐としている今、私たちに必要なものは、「鼻歌」マインドなのかもしれない。


 

 「レゲエ」という音楽のハードな面からアイリーな面まで、全てを網羅するMedical Tempoは、今年ついに、TONY the WEEDとの共作ダブワイズアルバム『FLY AWAY81』をリリースした。TONY the WEEDのハーモニカの旋律と、スピリチュアルささえ感じさせるリディムには、一聴してすぐにでもFLY AWAYしてしまいそうになる。 

 郷愁を誘うような心情を「エモい」と表現するのならば、彼らのリディムは一聴、「エモい」リディムであることは間違いない。

しかしただ「エモい」だけで終わらないのがMedical Tempo。レゲエという音楽とは切っても切り離せない「反逆性」を内包し、しかし耳触りはアイリーに。

彼らの医療的な音楽が、日本中、世界中を癒やす日もそう遠くはないだろう。





【Medical Tempo profile】

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謎のDUB集団!2020年から様々なアーティストとの作品をプロデュースし、コンスタントにリリースし続けている。更には、ライブショーケース、ラバダブなどのバックバンドもこなす、RIDDIMクリエイタークルー"MedicalTempo"。詳しくは発表されていないが、BIG HEAD(ダブミキサー、キーボードetc)と、KITANO DAIKI(ベース、ギター)を中心に数人のメンバーで構成されているらしい。

そして、"メンバーの個性と音楽性の幅広さ"から作り出されるRIDDIMは、生音.デジタル.DUBWISEを絶妙に調合してつくられたまさに音の薬!

メディカルテンポを堪能せよ!

https://medicaltempo.official.ec