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長崎県出身のレゲエアーティスト、IRIE TELLをご存知だろうか。Rock SteadyやSkaの音に乗って歌うオリジナルスタイルを持ち、彼ほど脱力してレゲエをしているアーティストを私は知らない。EARLY TELL名義でセレクターの活動やレゲエバンド TENEMENT HEARTのフロントマンの顔をもつ彼のバックボーンを語っていただいた。


【IRIE TELL Profile】
長崎県長崎市出身。Reggaeをベースにした唄い人。
60's Jamaican Musicをこよなく愛し、セレクター【EARLY TELL】としても活動中
2014年に長崎のレゲエバー【IRIE】でキャリアをスタートさせる。
高校3年間お手伝いさせてもらいながらスキルを磨く。
2019年に活動拠点を大阪に移す。
現在ギタリストKENGOとアコースティックレゲエユニット【TENEMENT HEART】を結成し、
そこを拠点に老若男女ゆったりと揺らす活動している。
Instagram: irietell007




●レゲエとの出会いを教えて下さい。
IRIE TELL:
きっかけは小学4年生の時にブレイクダンサーでブラックミュージックに詳しい兄の影響です。兄のウォークマンで、湘南乃風・NATURAL WEAPON・RYO the SKYWALKER・The Paragons・Toots&The Maytals・Mighty Diamondsを聴いたのが全てのはじまりです。最初はそれがレゲエだと分からないまま聴いていました。Mighty DiamondsのJah Jah Bless The Dreadrocksを初めて聴いた時は

「あ、これがレゲエなんだ、この裏打ちが『レゲエ』という音楽なのか」と、ざっくりですが少し分かるようになりました。レゲエ独特の土臭さに衝撃を受けました。


●小学生の時からMighty Diamondsを聴いていたのは濃いですね。レゲエとの出会いから音楽活動を始めた経緯を教えてください。
IRIE TELL:
NATURAL WEAPONさんに憧れて、中学2年生の時に歌詞を書きはじめました。そこからレゲエアーティストになりたい気持ちが芽生えて、放課後に山で一人で練習していました。今年で歌い始めて7年目になります。



●NATURAL WEAPONさんのどういうところに憧れたんですか?
IRIE TELL:
ジャマイカでのライブ映像を見て、本場でもパトワでボスしていた姿を見てかっこいいなと思いました。長崎レゲエフェスティバルという野外ダンスで初めて生でライブを見て、迫力にくらいました。


●何故サウンドマンやダンサーではなく、アーティストを選ばれたのでしょうか?
IRIE TELL:
もともとサウンドマンという文化をしらずレゲエを聴いていました。なのでレゲエをやりたいと思い立った時、アーティスト以外の選択肢がそもそもなかったです。初めてレゲエのイベントに行った時にサウンドマンという存在を知りました。

●アーティストになるべくしてなられたんですね。初めて作った曲について教えてください。
IRIE TELL:
初めて作った曲は「ごみのうた」という歌で、中学生の時に作りました。悩んでいる人や傷ついている人への癒しを与えてリサイクルしようという気持ちで作りました。


●中学生からそのスタイルが確立されてたんですね。歌詞はどういった時に思いつくんですか?
IRIE TELL:
何かを乗り越えた時や、自分の成長を感じた時によく降りてきます。午前中の太陽の光を浴びている時によく歌詞を書きます。午前中によく歌詞が降りてくることが多いです。


●どうりでTELL君の歌は午前から聴けるような陽気なレゲエだと感じていました。レゲエを始めた当時の長崎のレゲエシーンについて教えてください。
IRIE TELL:
長崎のレゲエシーンはとても熱かったです。サウンドですと、Mighty Thugz、Burning Blow、Inner City、Matereal Soundなど他にも沢山いました。歌い手だと翔さんを筆頭に長崎のシーンを盛り上げていました。そして九州のシーンを代表するChomoranma SoundのKCさんにもたくさんのことを教えて頂きました。

ChomoranmaのKCさんとは、IRIEの兄弟店のZIONというミュージックバーで出会いました。
KCさんは月一回ほどZIONに回しにきていて、ZIONの店長に紹介して頂きました。歌い始めた時からお世話になった先輩です。



●長崎には色んなスタイルのレゲエアーティストがいますよね。IRIE TELLという名前の由来は何ですか?
IRIE TELL:
レゲエという音楽のメッセージはもちろんですが、癒されるようなリズムが好きで、レゲエを好きになりました。レゲエを聴いた時に感じるアイリーな気持ちを伝えられるようなアーティストになりたいという思いからIRIE TELLとつけました。

●人柄にぴったりなお名前だと思います。初めてのライブのことを教えてください。
IRIE TELL:
「ホンダ楽器」という楽器屋の2階にあるライブハウスでのロックのイベントです。中学の卒業式の次の日でした(笑)

長崎のオールジャンルのパーティーに遊びにいった時、地元のサウンドマンの先輩がキャッシャーをしていたんですけど、書いた歌をどうしても聴いてもらいたくて、ウォークマンをスピーカーに繋いでその場で歌ったんです。それを近くで見ていたロックバンドの方から声をかけて頂いたのが初めてのブッキングです。

●10代ならではのバイブスですね。初めてライブした時のお気持ちはいかがでしたか?
IRIE TELL:
緊張が大きかったですが、歌いたい気持ちが強かったです。若手ならではの自分を主張したいというバイブスが高かったです。

●NATURAL WEAPONさんのスタイルとは違って、今はRock Steadyのリディムで歌うスタイルだと思うんですが、Rock Steadyにハマったきっかけを教えてください。
IRIE TELL:
NATURAL WEAPONさんの植物という歌が好きで。で、リディムの元ネタがDesmond Dekkerの007(Shanty Town)だよと兄が教えてくれてからこのゾクゾクする音はなんだろうとずっと気になっていました。でも、最初はこれがRock Steadyということがわかっていなくて、レゲエバーIRIEによく通っていたんですけど「この辺のレゲエを知りたいんですけど、どうやってDigればいいですか」と店主に訊いたら、「それはRock Steadyというんだよ」と教えてくださいました。その店主に借りたTrojanの二枚組のCD (TROJAN PRESENTS ROCK STEADY 40 GROUND-BREAKING HITS) を聴いて、衝撃を受けてから一気にドハマりしました。

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●そこから今のRock Steadyで歌うスタイルになった経緯を教えてください。
IRIE TELL:
きっかけはChomoranma Soundの周年イベントのラバダブです。その日は全くボスれず歯が立たない一方で、先輩たちはずっと絶えずボスしていました。先輩たちの気迫が凄く圧倒されました。その気迫はジャマイカ人のようでした。そのラバダブは悔しくて忘れないです。Chomoranma Soundは老舗サウンドなので、客層の年代も高く、先輩DeeJayのスタイルも昔ながらのオールドスタイルで心から痺れました。その日からオールドスタイルを勉強しようと決意しました。あの日がなかったら今の自分はないです。

●悔しさをちゃんとバネに変えて、今のスタイルになったんですね。TELL君は歌い手としての活動だけではなく、EARLY TELLとしてセレクター活動もされていますが、セレクター活動をはじめた経緯を教えてください。
IRIE TELL:
高校を卒業した19歳の時に諸事情でIRIE TELLとしての活動休止をしていたんですが、その時にもともと集めていたRock SteadyやSkaのレコードでセレクターをしてみたくなり、セレクターとして活動を始めました。

●EARLY TELLの誕生はそんなきっかけだったんですね。レコードはいつ頃から集められていたんですか?
IRIE TELL:
高校二年生の時です。Bitty Mcleanが福岡の天神にあるVoodoo Loungeに来日した時にライブを見て衝撃を受けて、物販で売っていたBittyの「In and Out of Love」のレコードを買ったのが初めてです。そこからRock SteadyやSkaのレコードを集めるようになりました。

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●ありがとうございます。TENEMENT HEART結成と相方のKENGOさんとの出会いについて教えてください。
IRIE TELL:
結成したのは2019年です。出会いは高校二年生の時に長崎の高島という軍艦島が目の前にある離島に住んでいた時に、先輩からKENGOとKENGOの実兄であるSICKLE ONEさんとの二人のライブ動画を見せてもらい、画面越しながら彼に興味を持ち始めました。それからKENGOとSNSでメッセージのやりとりをするようになりました。最初はトラックを作ってもらいたいと僕からKENGOに連絡を取りました。そこから初めて一緒にライブしたのは大阪のユニティーフェイスにライブに呼ばれた時で、一緒にライブしようと僕から誘いました。でも最初は断られたんですけど、当日になって「やっぱり行く」と言って来てくれました。その時に初めて対面でKENGOと会いました。そして二人でライブをしてみて「一緒に組んだら面白そう」と思い結成に至りました。Jacob Miller のTenement Yardが好きだったことと、門真にあったRims Barの雰囲気からインスパイアを受けて、TENEMENT HEARTと名付けました。

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●積極的ですね。元々レゲエバンドを組みたいと思っていたんですか?

IRIE TELL:光風&GREEN MASSIVEのライブを見に行った時に、一緒にセッションさせて頂いたことがきっかけです。彼らのようにファンデーションのレゲエをまといながら、メッセージを届けるバンドをしたいと思いました。


●素敵ですね。流れに身を委ねているんですね。
IRIE TELL:
はい。TENEMENT HEARTとして本格的に動きたくてハタチの時に大阪に来ました。

●大阪に来てもらって出会えて嬉しいです。アーティストとしての夢や目標は何ですか?
IRIE TELL:
盛り上げれるようなアーティストというより、自分の好きなポジションで皆が僕の音楽を聴いて、癒されるようなアーティスト像を目指しています。スタイルというのは、受けた影響や自分がかっこいいと思っている音楽が形になったものだと思っています。BadなスタイルやRebelなスタイルもいいですが、自分は自分が受けた影響を大事にしたいです。日本語で、昔のSkaやRock Steadyを彷彿させるような音楽を届けたいです。音に乗せて調和を届けたいです。


●同じくストレス時代と言われる今の時代には調和が必要だと思います。最後の質問になります。読者に伝えたいことはありますか?
IRIE TELL:
インタビューありがとうございました。今、次の作品を作っているので楽しみにしていてください。

●古き良きレゲエを愛する若いレゲエ関係者みんなでレゲエリバイバル起こしましょう!本日はありがとうございました!

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< IRIE TELLおすすめの三曲 >
1.異端児の城 / 青谷明日香 with Mahto @ 菊川 PONY'STOY
固定概念を打ち壊すようなマイノリティー参加。変人でいいんだと思わされます。



2.カルカヤマコト「Life is one way」
一日の始まりのような歌です。ハッと正気に戻してくれるような一曲です。



3.Errol Dunkley - You're Gonna Need Me

先輩に借りたTrojanのCD (TROJAN PRESENTS ROCK STEADY 40 GROUND-BREAKING HITS)に入っていて、初めて聴いた時に凄い衝撃でRock Steadyにゾッコンになるきっかけのチューンです!