text & photo:OKAMAI (https://www.instagram.com/okamai_ja/



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Buju bantonが10年の刑期を終え開催されたナショナルスタジアムでのコンサートから3年以上たち、待ちに待ったジャマイカでのロングコンサートはジャマイカの国宝Beres Hammondとの共演というファンにとっては待望のもので世界中からファンが押しかけた。そのほかにもMarcia griffits 、Tarrus Riley、Lustなどジャマイカで生まれたレゲエの伝説的アーティストが一同そろう、レゲエに対する愛の詰まったポジティブエナジーに包まれた元旦、歴史的な一夜になった。

元旦の夜にジャマイカのオーチョリオスで開催されたコンサート"intimate"は一般チケットが約10000円、VIPチケットが30000円というコンサートで、言ってしまうとジャマイカの最低賃金=週に10000円ということからもわかるように、決して誰でも行けるショーではない。

な、はずなのに会場までの一本道はいつもなら30分以内で着くのに国中の大移動かと思うくらいのコンサートに行く車の大渋滞。

列から出て反対車線を逆走して会場に急いだにも関わらず2時間半かかった。頭の中ではBujuの"not an easy road"がループしていた。

会場に着いたのは午後9時で、LUSTがパフォームし終わる頃だった。

聞くと5時の開門前から観客が続々とゲートに並び、会場へ向かう交通渋滞に巻き込まれた人たちのことを考えて、コンサートの開始時間を午後7時から90分以上遅らせたという。

会場付近の宿泊施設は全て完売、ガムやタバコを歩きながら売る人たちも、一晩中旺盛な売上げで大喜び。途中に降り出しためぐみの雨で3000円で販売した傘もソールドアウトしたそうで地元民への経済効果も莫大だ。


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芸能歴58年の大ベテラン”レゲエの女王”Marcia Griffits が"i shall sing "で登場、二番目の息子もステージにあげ「ここで一緒に"all my life"を歌えて光栄です」と。

Marciaがなんども「レゲエミュージックはポジティブ!!」というようにポジティブバイブスで会場を包み込んだ。「ジャマイカには2人のアイコンのボブがいる」とゆかりの深いボブマーリーとボブアンディをトリビュートで"redemption song "をアカペラで披露。”electrick boogie"観客をステージにあげみんなお揃いのダンスで盛り上げ、レッドストライプから、リビングレジェンド賞を授与した。


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次に登場したのはTarrus Riley。"lion pow"で登場、"stay with you""she's royal""super man"など次々ヒット曲を披露。他のメンツと比べると明らかに若手ではあるが、歌唱力と音楽愛の深さ、何よりもジャマイカの人々の心に響く歌を作る能力がたけている。手袋をはめてマイケルジャクソンの動きもみせ、"human nature"。「父は書類上では偉大な父ではなかったが、日常的に親友だった。泣かないようにしているよ。ジミー・ライリーが僕に音楽を教えてくれた。今夜はジミー・ライリーの孫が来ている、僕の息子を紹介したい。なぜなら僕が彼を作ったから」 と12歳の息子がギターを持って登場。亡き父親、ジミーライリー、そして最近癌で息子を亡くしたアイドニアと先週長男を亡くしたスティーブンマーリーへの追悼の意も表すためマルーン5の"memories"を披露。 観客は心を打たれ涙を流して感動、質の高いレゲエを披露した。これこそ今回のコンサートのタイトル"intmate"(親密な)だった。


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長いバンドチェンジの後、1:30ごろお待ちかねのBeresが真っ白の衣装をまとい、「Thought I could live without you......」(君がいなくても生きていけると思ったんだ)。ベレスが悠々と登場し、そう歌うと、観客は叫んだ。

その直後 "falling in love all over again"ですぐにBujuが真っ赤な衣装で勢いよく駆け込んで登場した瞬間が、会場一の悲鳴がこだまし全く違う次元に飛ばされた瞬間だった。

そしてまさかのセットリストで驚かされた。(いつもならコンビ曲は最後に歌う)BeresがBujuの肩に手を回し、二人は演奏を続ける。Beresは本当に幸せそうで、いつも通り愛に溢れているしBujuも古くからの旧友にやっと会えたかなような喜びで満ち溢れている。"pull it up"も披露した後bujuが「裏で水飲んで待ってるわ」と一旦ステージから降りる。




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Beresのソロは1時間以上続き、ヒットソングカタログから定番の名曲を次々と披露し、ファンもみんな笑顔で、一曲一曲大合唱で歌って踊る。レゲエは本当にポジティブだ。

ハーモニーハウスバンドの上質なレゲエを堪能。そしてポップカーンとのコラボ曲”God is Love”に拍手大喝采。67歳のBeresは、タイムリーでテンポの良いヒット曲を披露し、Beresがジャマイカの宝、史上最高のシンガーである理由を証明した。

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ステージ前方の熱狂的なベレスファンからのリクエストで"one step ahead"など数曲アカペラでも披露しファンとの親密な時間になった。

「ベレス愛してるわー」と女性は叫び男性客も「ベレス!」と叫ぶ老若男女みんなから愛されているBeresを心から尊く感じた。

もちろんこの"intimate concert"には首相のアンジュホーレスも訪れたほどだ。

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Beresからスムーズに移行して小雨が降り始める直前にBujuがステージに立つと、また同じような展開になった。会場総立ち、携帯でBujuの動きを追い、Bujuが歌い始めると観客はそれを引き継ぎ、ブブセラなど最高レベル音量で鳴らし、ガンフィンガーでジャンプして歌い、Bujuも観客も互いにパフォーマンスを披露し合った。

Bujuのバンド、シャイロー・バンドは絶好調で、バック・シンガーたちもDestiny、Untold Stories、Murderer、Close One Yesterday、23rd Psalm といった曲のハーモニーを完璧に奏でている。バンドチェンジもいつ変わったのかわからないほどで、気づくとBujuのバンドだったほどだ。

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30年以上前のヒット曲、初期ダンスホールから最近のレゲエと、止まる事ない高速度なマラソンパフォーマンス、まさに"Stamina Daddy "は2時間以上続いた。

途中Bujuが感極まって涙を流す場面も。「会場のエナジーがすごすぎるんだ。みんなを心から愛してる!」と叫んだ。

BujuやBeresに会いに費用や場所関係なく世界中から観客がやってくるのだ。Bujuもできる限りステージ前のVIPエリアの観客にタッチし、かかわった。

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名曲の数々を披露し何千人もの観客を魅了し、Buju,Beres がなぜ長い間、世界的に尊敬され、音楽がどの世代にも愛し続けられているのかを再確認した。

明らかに音楽への愛とショーマンシップのレベルが違いすぎた。

最近の流行り廃りの早いファーストフードみたいにすぐできる曲、一瞬出てくるアーティストには真似できない、音楽に対する愛の重さの違うアーティストだからこそできたコンサートで他では経験した事ないコンサートだった。

2023年が始まったばかりだが既に今年一番のコンサートになることが間違いない。




OKAMAI
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ジャマイカ在住15年のコーディネーター、ライター、ダブ屋、日本ツアーアーティストブッキングエージェント,ジャマイカでのツアーガイド。旅好きで行った国60カ国 "危ない世界の歩き方 危険な海外移住編""まずは行動する人がうまくいく”著者。 https://www.instagram.com/okamai_ja/