音楽の力で世界中の人々を一つにし、共に踊ることを可能にするレゲエEDMの先駆者Kēvensが、最新アルバム『Call To Balance』をリリース。パンデミック中の自己探求を経て制作されたこのアルバムは、レゲエとエレクトロニックを融合させた深いメッセージが込められた作品です。ここでは、Kēvens本人にインタビューし、彼の音楽や『Call To Balance』に込められた思いを語ってもらいました。
家族やバックグラウンドについて教えてください。それが音楽キャリアにどのように影響を与えましたか?
Kēvens: 私は多文化的な家庭で育ちました。父はセリア・クルスやミゲル・アセベスといったスペイン語圏の古い音楽を好んでいて、母はナナ・ムスクーリ、ジェームズ・ブラウン、そしてボブ・マーリーまで幅広い音楽を聴いていました。でも、心をつかまれたのはジャマイカのサウンドシステム文化でした。
音楽を始める前は、飛行機に夢中でした。高校卒業後、パイロットになりたくてアメリカ軍に入ろうとしましたが、視力が悪かったり、身体が弱かったりして試験に落ちました。その後、トヨタのディーラーで小型トラックの配達をする仕事を始め、夜はDJとして活動していました。
Kēvens: きっかけは、南フロリダでダブ・レゲエのサウンドシステム文化に触れたことでした。Virgin Virgoという小さなサウンドを追いかけて、マイクを握りながらスキルを磨いていました。でも、しばらくすると自分にもっと挑戦したいと思うようになり、ライブミュージックにのめり込んでいきました。どんなバンドでもマイクを握らせてもらえるなら参加して歌っていました。
ある夜、DJをしていたとき、地元のレゲエバンドCopaceticと一緒にジャムをしていたゲストのベース奏者が「君のエネルギーとスタイルは最高だね。自分の音楽プロジェクトに興味があれば家に来ないか」と誘ってくれました。その番号をもらい、数日後に彼の家を訪ねました。その家は何もない場所にある大きな家でした。中に入ると、部屋にはボブ・マーリーとウェイラーズの写真や記念品が壁中に飾られていて、「これはボブ・マーリーに関する貴重なコレクションなんだろうな」と思いましたが、それがただ無造作に置かれているのを見て驚きました。
セッションをしていると、キッチンに通じるドアがゆっくり開き、ラスタの女性が「皆さん、何か飲み物はいりますか?」と声をかけてくれました。そのときに「まさか」と思い、再び壁を見て、それから彼女に目を向けました。「これはボブ・マーリーのお母さんだ」と確信しました。その女性が部屋を出た後、彼を見たら笑顔で「正解だよ」と言っていました。
実はその時、ボブ・マーリーの兄弟アンソニー・ブッカーと一緒にバンドを始めていたんです。でもそれまでは、彼がボブ・マーリーの兄弟だとは全く知らなかったんです。
その後、バンドを辞めて自分の道を歩み始めました。UKでリルトという飲料の広告モデルを務めたとき、現地でジャングルやドラムンベースを聞いて、その音楽に夢中になりました。それをライブで再現しようと試行錯誤しましたが、中々満足いくつものはできませんでした。でも、2023年に『Legal Dreamers』をリリースしたとき、ジャマイカのレゲエシングルチャートで成功を収め、ついに「ReggaeEDM」という自分のブランドを確立することができました。
パンデミック中、音楽への取り組み方はどう変化しましたか?また、『Call To Balance』の制作に影響を与えたものは何ですか?
Kēvens: 『Call To Balance』は、自分がアーティストとしてだけでなく人間として進化した結果生まれた作品です。このプロジェクトは非常に深いものから生まれました。パンデミックの挑戦だけでなく、個人的な出来事がきっかけでもあります。その中で愛する人を失いかけたり、孤独を感じたりしていました。その結果、アーティストとしての能力や目的を問い直したんです。
疑問や感情が渦巻く中で、自分の強さと生きる理由を見つけました。この過酷なプロセスを経て、カオスを調和させ、自分たちとのつながりを取り戻し、再び考えることを促すアルバムを作り上げました。
『Call To Balance』というタイトルに込めた意味やテーマを教えてください。
Kēvens: 『Call To Balance』というタイトルは瞑想中に思い浮かびました。これはレゲエやダブの深さを、エレクトロニックミュージックのエネルギーとダイナミズムと融合させたものです。
音楽を通じて社会問題や不平等を取り上げていますが、どのようなメッセージを伝えたいですか?
Kēvens: 人々が国と国、人と自然、そして精神や神との共生関係を理解しない限り、自分はその重要性を伝え続けたいと思っています。これが受け入れられないのなら、なおさらそのメッセージを届ける必要があると感じています。
日本での公演やファンとのエピソードで印象深いものはありますか?
Kēvens: 高松での公演中、代理マネージャーが玉露のお茶を楽しめる場所に連れて行ってくれました。その時、自転車に乗っていた若者がラッシュアワー中に転倒しました。驚いたのは、周りにいた人々が誰もイライラしたり怒鳴ったりすることなく、穏やかに彼が立ち上がるのを見守っていたことです。その若者が頭を下げて去っていく姿を見て、日本の文化に深く感動しました。マイアミではこんな光景はほとんど見られません。
ULTRA KOREAでの出演経験について教えてください。
Kēvens: ULTRA KOREAに出演したのは特別な経験でした。レゲエアーティストとしてだけでなく、ライブバンドや花火を取り入れた最初のアーティストとして、自分にとっても大きな意味がありました。2000年にマイアミビーチで開催されたULTRAフェスティバルでの経験があったからこそ、ULTRA KOREAへの出演が実現しました。
ULTRAのメインVJだったベロ・ヴィルクハウスが、自分をULTRA KOREAのエージェントに紹介してくれたんです。振り返ると、ULTRA KOREAのバイヤーやエージェントは業界で最も素晴らしい人々でした。彼らは「PLUR(平和、愛、団結、尊敬)」というレイブシーンの精神を体現していて、それが全てだったと思います。
アジア、特に日本や韓国のファンに向けたメッセージをお願いします。
Kēvens: 日本での公演が懐かしいです。戻れる日が待ち遠しいですね。韓国も特別な場所です。次回はもっと長く滞在して、新しいショーでソウルを盛り上げたいと思っています。
音楽を通じて世界に伝えたい最も重要なメッセージは?
Kēvens: ポジティビティは不可欠です。
ジャンルを融合したり独自のスタイルを作り上げたいと考える若いアーティストにアドバイスをお願いします。
Kēvens: ダイヤモンドを磨くには時間がかかります。それが輝きを放つまでには長い道のりがあるかもしれません。時間が足りないように思えるかもしれませんが、焦らずに自分のサウンドやメッセージを磨き続けてください。Relevant(意義ある存在)であり続ければ、全てはうまくいくはずです。
Call To Balance
1. Battle for Peace
2. Soñadores Legales
3. Save Me
4. This is LOVE
5. Little Boy Blue
6. World Is Burning
7. Burn Down The Throne
8. Sweet Lady Liberty