Text & Interview By Acura from FUJIYAMA SOUND


愛知県は名古屋から日本全国のReggaeファンへ音を届け続けるBanty Foot。結成から20年を迎えた節目の年となる2021年初夏、3年ぶりに満を持してオリジナルコンピレーションアルバム「# CCC」をリリースした。


今回は6/30のニューアルバムリリースのタイミングでBanty Footを引率してきたJUNに20周年という歴史やアルバムへの思い、そしてこれからの目標まで語っていただいた。



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【JUN from Banty Foot】
愛知県名古屋市出身。2004年にCLUB RADIXで⾏われたSOUNDCLASH【ROAD TO TUFF ONE】で優勝。これを機に東海エリアから全国へ進出。海外アーティストや海外サウンドのサポートや、数多くのBIG DANCEに参加するなど、レゲエシーンで大きな実績を確立。

サウンド・クラッシュから、大型フェスの総合司会、ラジオのナビゲーターまで幅広くこなす。
また、豊田自動織機の実業団サッカー選手としても活躍した経歴もあり、レゲエとサッカーをこよなく愛す。






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●3年ぶりとなるオリジナルコンピレーションアルバムリリースそして、結成20周年おめでとうございます。

JUN:ありがとうございます!


●早速お聞きしたいのですが、Banty Footとして歩んできた20年はJUN君にとってどんな道のりでしたか?

JUN:この20年はとにかくめちゃくちゃ早かった、もう20年経ったのかという感じで、いばらの道とか過酷だったとかは一切なく、今までの自分の人生の中で一番続けてきている事でもあるし、まさか人生の半分をReggaeに注ぐなんて当初は思ってもいなかった。本当にあっと言う間の20年でしたね。


●その20年の中で、今でも印象に残っている出来事はありますか?

JUN:印象的な出来事はやっぱり初めてのJamaicaかな。
2003年に宿も何も決めずに飛行機のチケットだけ買って行ったんだけど、その中でもDubを録りにスタジオに行った時、有名なアーティストがいる中にまだまだ駆け出しで本当にDeeJayなのかな?の人もたくさん居て、その人達とよく口喧嘩みたいになっていたんですよ。
今となれば冗談まじりでバカにされていたのは分かったんですけど、当時は英語が全く話せないからディスされているって感覚で、でも言い返せない自分がいて、言い返したいんだけど日本語しか出てこない。。。みたいなモヤモヤがすごく悔しかった。
その時はお互い別々のサウンドだったんだけど、実は初めてのJamaicaは現相方のPrimeと一緒に行っていて、スタジオで僕がバカにされていた時Primeは僕より少し話せていたので、その状況を横で見てて笑ってたよね。
それも悔しかった(笑)
初のJamaicaは全部が衝撃的だったんだけど、とにかく悔しかった。
だから英語やパトワを勉強しないとダメだと思いましたね。

●20年間を振り返ってその場面を思い出すって相当悔しかったんですね(笑)


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●JUN君はラジオパーソナリティー(ZIP-FM77.8)を通してレゲエ業界に留まらず多方面にご活躍されていますが、何か秘訣はありますか?

JUN:声をかけてもらう仕事を全部受ける感じではなくて、まず承諾する前にその仕事で「どういう風にレゲエが広まるかな?」という可能性を探ることが一番の秘訣かな。

例えば名古屋グランパスのオフィシャルサポートソングとか、その試合前にPLAYする事に関して言えば、Banty Footがプロデュースした楽曲は聞いた人の背中を押す曲もあるから、選手や応援するサポーターの背中も押せる可能性もあるんじゃないかな~とか。
本当に色々なイベントに出演することが多いけど、根本は「レゲエをいかに広められるか」という部分を大事にしてる。

極端に言えばYah Manも知らない人達の前で演るということは、その人達にYah Manを伝えられる場所がBanty Footにはあるという事が既に可能性を広げられるんじゃないかとも思いますね。


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●そろそろ3年ぶりとなる新作「 # CCC」についてお聞きしたいのですが、タイトルの由来、今作を制作する上で何かテーマはありましたか?

JUN:このタイトルになっている「# CCC」(トリプルシー)はChange, Challenge, Chanceの頭文字を取って「# CCC」ていうタイトルを付けました。実は当初アルバムを2020年に出そうと思っていたんだけど、世界的にコロナウイルスの影響があって、自分の中でアルバムのテーマを変えたいなって思っていたんですよ。


それを考えていた時に今まで当たり前であった世の中の形式がガラッと変わったじゃないですか?そういう変化をTVなどの報道を見る度に「変わる事」を僕は少しネガティブに捉えてしまっていたんですよね。でもこの感覚は僕だけじゃなくて、僕みたいな気持ちで捉えている人は沢山いるんじゃないかな?と思って、僕は「変わる事」に対してネガティブなイメージよりポジティブなイメージにしたいなと思って、まず「Change」が出てきました。


その後にChangeするっていう気持ちになった時には新しい事に挑戦しよう!という思いで「Challenge」という言葉が出てきて、その新しい挑戦に100%気持ちと行動を注ぎ込めば「Chance」が舞い降りてくると思って「# CCC」というタイトルを決めました。


●そういうポジティブな意味があったんですね。ここで聞きたいんですが、レゲエの業界を越えて多方面に繋がりのあるJUN君らしく、今回の「# CCC」も客演アーティストが気になるところなのですが、アルバムを制作する上での人選はどうやって決めているのですか?

JUN:人選はその時に自分がこの人と曲をやりたい!と思ったアーティストに声をかけていますね。
前回までも今回も、売れているからこの人を選ぶという感じは全く無くて、コンビの組み合わせとかもあのアーティストとあのアーティストが一緒になったら面白いんじゃないかな?っていう直感ですね。

自分が面白いなーって思ったプロデュースを聴いた皆んなもきっと面白いと思ってくれるだろうなーと自分の中で一致した時に決定します。

だから人選に関してあんまり計算はされていないんですよ。

今までリリースした7枚の作品全部その感覚でやってきました(笑)


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●そうだったんですね(笑) まずは5月26日にニューアルバム「# CCC」からの先行第一弾リリースとして1曲目に収録されているDaybreak feat NEO HERO, RAY & 裂固のプロデュースについてお聞きしたいのですが、こちらは前作の「everyday is a NEW DAY」に収録された「DIRECT」と同じ客演になりますが、何か意図はあるのですか?

JUN:この楽曲には意図があって2020年野外で主催しているDIRECT FESが初めて野外で開催できなくて、結果オンラインで開催したんですけど、もともと「DIRECT」って曲はDIRECT FESの盾となる曲をあの3人で作ったというのもあったんです。

そこで2020年の開催がオンラインになったことを受けて、もう一回あの3人でこの状況に兆しを作っていきたいという思いでメッセージソングを作りたかったんですよ。
だから「Daybreak」日本語で「夜明け」というタイトルをコロナ禍の夜明けという意味も込めて作りました。


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●そして、6月16日に先行第二弾リリースとして6曲目に収録されているRUDEBWOY FACE & ¥ellow Bucksの「Light It Up」ですが、このコンビネーションはヒップホップ、レゲエの数多くのファンが聴きたかった2人の初となるコンビとなりましたが、制作の経緯などお話いただけますか?

JUN:もともとRudebwoy Faceとは同い年なんだけど彼は僕よりずっと前からシーンにいて、レゲエ歴で言えばかなり先輩なんですよ。昔から彼はめちゃ格好いいし「ラガ」だから憧れの眼差しで彼を見ていたんですけど、実は自分が楽曲のプロデュースを始めた時から、Rudebwoy Faceとは一緒に曲を作りたかったんです。

でもその時にふと思ったことがあって、「もしRudebwoy FaceとBanty Footが曲を作るのなら絶対的な爆弾を作らないと俺は一生後悔する」と思ったんです。

彼はいろんなレーベルや客演でリリースしているけど、どんなRiddimに乗っても、誰とコラボしても、聴いた人が、いい意味で「やっぱりRudebwoy Faceはラガだね」ってなると思うんだけど、Bantyのプロデュースではそうはしたくなかったんですよ(笑)。もっとものすごい曲にしたかったってずーっと思ってて。
だから爆弾を作るアイディアが纏まるまでは彼に声をかけなかったんです。

そこから月日が経って2020年の4月にRudebwoy Faceが、より「ラガ」になる曲のアイディアが自分の中にポンっと浮かんだんですよ、プラス今まで色んなアーティストと楽曲を制作してきた自分の自信もあって、絶対今回のアルバムでRudebwoy Faceと制作したい!と思ったのが最初のキッカケですね。

その時降ってきたRudebwoy Faceをより「ラガ」に際立たせるにはRapperだと思って、そのRapperって誰なんだろう?と思った時にすぐ¥ellow Bucksが思いついたんです。この2人だったらRudebwoy Faceはより「ラガ」に魅せれるなと。

Bucksの人気とか知名度とかは全く関係なく、BucksならRudebwoyに負けずに引き立たせるスキルもあるし、Reggaeのトラックにも乗せれるなと思ったんです。

でもその時頭の中では描いていたけど、正直やってくれるとは思ってもいなかったんです。
可能性としては10%あったらいいなぐらいだったかな。

まずはRudebwoyに電話したんです。そうしたら「一回Riddimを聞かせて欲しい」と言われて、送ってから5分後ぐらいに連絡が返ってきて「これだったらイケる」と言ってくれて、その時に「これRudebwoyだけじゃなくて¥ellow Bucksとやりたいんだよね」って言ったらRudebwoyが「すげー面白いじゃん」って言ってくれて、でもまだBucksの承諾を得てなかったからそこから初めてBucksに連絡したんです。

Bucksにアイディアを同じように説明したら、Bucksも「やりましょう!」って言ってくれて実現に向けて動き出した感じですね。

Bucksとはその前からDubとかも録っていたから「どこかのタイミングで制作したいね」とは話していたんだけど、自分の中でBucksと誰でいこうかな?と思ってたので、すごくいいタイミングが来たって感じですね。


「Light It Up」っていうタイトルのごとく「シーンに光を照らす2人」というコンセプトもしっかり話してから3人でスタジオに入って制作したんですけど、アイディアを全員が肯定的に考えてくれたおかげで制作もスムーズに進みましたね。


●楽曲も聞かせてもらって、PVも見ましたけど、これは今年の夏の曲になりそうですね!

JUN:アーティスト2人のMAN POWERも重なって、おかげさまで先行リリースした瞬間からストリーミング回数もYouTubeの再生回数も今までに無いぐらい伸びているし、現場で色んなDJやSOUNDがかけてくれているのが一番嬉しいことですね。


●その他にも同じ愛知県出身のVILLSHANA、和歌山県出身のR&BシンガーソングライターKAHOH、滋賀県出身のOGU、や大阪の39-MAN、愛知のKonG、PINOなど若いレゲエアーティスト達からジャンルに捉われないアーティストまで積極的に客演として迎えていますが、経緯等ありましたら教えていただけますか?

JUN:VILLSHANAは名古屋の先輩でもあるDJ Ryow君のアルバムに入ってる音源を前から聞いていたんですけど、東海のSocks, Bucks, AK君達とは少し違ったHip Hopアーティストの一面を彼から感じていたんです。Reggaeに置き換えてみるとBanty Footも今までの名古屋のReggaeサウンドとは少し違う色だと思っているから、同じ様な雰囲気を彼に感じていて、それもあってずっと曲をやりたいと思っていて今回声をかけさせてもらいました。


しかも彼とは絶対「恋愛の曲」をやりたくて、それなら女性アーティストだなと思ったんですよ。
KAHOHちゃんとは今回の制作まで全く面識がなくて、連絡先も知らなければ、会ったことも、話したこともなかったんです。ただ僕がYouTubeで女性アーティストを探していた時に「あーこの子良い!」と思ってダメもとでオファーしたんですよ。そうしたら受けてくれて制作に入りました。
もちろんVILLSHANAとKAHOHちゃんも初LINKで作り上げた楽曲です。もう本当「直感」(笑)


39-MANは去年のHIGHEST MOUNTAINの出場権をかけたHIGHEST CUPがオンラインで開催されていて、その時に僕が一目惚れしてオファーしました。


OGUは初めてLIVEを見てから思っていたんですが、彼に関してはReggaeの枠を越えてシンガーとして成長していったら面白そうだなって思いもあって、まだ荒削りな部分もあるけどそこも伝えていけたらと思って、KonGとのコンビネーションを制作しました。この曲は未来に向けて先行してやってもらった感じですね。


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PINOやKonGはに関しては単純にここから愛知のReggaeシーンを引っ張っていって欲しいという強い気持ちもあって、早い段階で色々経験をした方がいいのも僕は分かっているので参加してもらいました。

僕は若い才能ってすごいなって思っているので、彼等は柔軟性もあって、その子達と制作できたら自分の経験にもなるし、その子達が経験して来ていないことも自分から発信出来るのかなって思っています。
だから常にリサーチしてアンテナ張ってますね。


●そして、Banty Footのコンピレーションアルバムではおなじみのアーティストはもちろんですが、特に今作でのEXPRESS、THUNDER、導楽、SHUNなどの客演についてもエピソードがありましたら聞かせていただきますか?

SHUNに関しては2020年の4月にtwitterで始まったワンバースチャレンジの発起人であって何か次世代で発信していく気持ちがあるアーティストだなと思っていたし、関東のDeeJayって沢山いるけど、そういう動きをするアーティストを久しぶりに見たなっていう新鮮さもあってオファーさせてもらいました。

ここもコンセプトが決まっていて SHUN=GYAL TUNEみたいなイメージが一般的にはあると思うんだけど、彼と話していたり、彼の楽曲を聴いて僕が気付いた彼の根底にあるREBELな部分を引き出したかったんだよね。

この楽曲に関しても僕らだから一緒にできた作品だと思う。

THUNDERは今回が初のプロデュース。まさか受けてくれると思ってなかった(笑)
彼自身も人と楽曲をやるのは何年ぶり?って感じだったみたいなんだけど、受けてくれて嬉しかった。

THUNDERとの制作は本当に面白かったし楽しみましたね。彼は国内外のReggaeやDancehallに関してすごく考えているアーティストの1人で、彼の目指すべき所があるからそれを壊したく無かった。
だから常に連絡を取り合って2人でしっかり話し込んで作り上げた良い作品ができました。

導楽とは7年前に一度一緒に曲を作っていて、これも直感だったんだけど、彼が今住んでいるCebuから日本をどういう風に見てるのかな?というのが純粋に気になって、日本にいるアーティストとは違う感覚で作ってくれるんじゃないかな?と思ってオファーさせてもらいました。

考えていた通りに彼が過ごす今の生活の中で気付いた幸せだったり、生きている事に関しての感謝の気持ちだったりを歌詞に表してくれて「More Alive」が出来上がりました。


EXPRESSはぶっちゃけ今回ずっとオファーを断られてました(笑)

後に理解できたんですけど、その理由として過去に一緒にリリースした「交差点」という楽曲が引っかかってたと思うんですよ。

曲というのはアーティストのその時の心情で生まれるものなので、交差点みたいな楽曲を作ろうと思って作れるものでも無いと思うんですよ。だから6回目ぐらいにEXPRESSに連絡した時に「Big Tuneかどうか決めるのはリスナーだから俺はおまえと楽しんで曲を作りたいんだよね」と伝えて、そこで色々話してる中でその時のEXPRESSの心情を聞いて、だったらこういう曲をつくろうぜ!って制作したのが今回の「落ちこぼれのスター」って曲。

シーンの偉大な先輩の背中や活躍する後輩の姿を見てやってきた自分達が、負けん気を持ってやり続けてきた自分達に言い聞かせる曲になった。だからサビの部分で歌ってる「ふざけんじゃねー」っていうのは世間の皆に言っているわけじゃなくて、自分達に言ってるんです(笑)


●プロデューサーとしては当たり前だと思いますが、各アーティストへの思いと、一緒に制作する楽曲への思いが一つ一つしっかりしていて、JUN君だから作り上げられたコンピレーションアルバムなんだなと改めて感じました。


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●現在はラジオ番組やイベント出演、イベント企画、楽曲プロデュース等の活動がありますが、今後の目標等ありましたらお伺いしたいです。

JUN:正直な話、アルバムリリースしたばかりなのですが、すでに次の制作に取り掛かっています(笑)
もちろん、ラジオやイベント企画や現場出演は引き続きやっていきますが、特に楽曲制作に集中して力を注いでいきたいですね。
プロデュースを続けてきた甲斐もあって色々研ぎ澄まされてきて、アイディアが止まりません(笑)
まだやったことないんですが、Reggae特有のワンウェイなども先々に作りたいですね。


●では最後にこれからBanty FootのようなSOUND MANになりたいと思う若者に何かメッセージをいただけますか?

JUN:僕はずっと「直感」「直感」と言っていますが、その「直感」を養うために常に音楽を楽しむこと。
だから自分の可能性を狭めて音楽をやって欲しくないですね。「俺なんて」とか「出来るわけ無い」みたいに思ってもとにかくやって欲しい。

僕も出来るわけないな思ってた時もあったし、でもやってみたら出来たっていう。
だからなんでもやることが大事だと思う。

そして苦しまずに常に楽しんで考える。だから売れようと思って音楽はやらない方がいいよ(笑)


●彼らの節目の年にリリースされた「#CCC」はBanty Footのコンピレーションアルバムらしく長年のファンから初めて聴くリスナーも満足できる内容になっていて20周年を迎えたBanty Footの勢いをさらに加速する1枚です!

本日はありがとうございました。