ジャマイカの現行Dancehallシーンで存在感を高めるDJ MACが日本へやってくる。
今回のJAPAN TOURを仕掛けるのは、LIFESTYLEのKOHEY。そしてツアーにはVIGORMANも参加する。
DJ MACとの出会いから今回のツアー、そして現行のジャマイカと日本をつなぐ二人の動きについて、KOHEYとVIGORMANに話を聞いた。
DJ MACに、とりあえず会いに行った
――まず今回、DJ MACを日本に呼ぶことになった経緯から聞かせてもらえますか?
KOHEY: ジャマイカはもう何回行ったか忘れてる。10回ぐらい行ってるんですけど。
Tommy Leeのボイス自体はもう結構前からあったんですけど、それを含めたジョグリンを仕上げるためにジャマイカへ行ったんです。
その時、WYFLが向こうでめちゃくちゃボスってて。「これMACを絡めて出したら、もっとリーチが広がるんちゃうかな」と思って、MACのところに行ったんですよ。
――最初から日本に呼ぼうと思って会いに行ったわけではなかった?
KOHEY: そうですね。曲の仕事を頼みに行った時に、「日本に呼んでよ」みたいな感じになって。
僕も自分のイベントとかフェスの動画を見せたら、「バリやばいやん」みたいになって、その日に決まったみたいな。結構ノリでしたね。
でも、なんか肌感でいいやつやって。
もう「やばいのできた」って、Gacha君とも完成したつもりでいたんですけど、MACだけが「ベースラインここを直せ」とか言ってくるんですよ。
別に、ただの日本人の楽曲やったら適当に終わらせることもできると思うんですけど、そうじゃなかった。
ちゃんとプロなんですよ。こだわりがあって。
そこで信用したのもありましたね。

KOHEYとVIGORMAN、互いの動きが刺激に
今回のDJ MACツアーへとつながる流れの中で、もうひとつ興味深いのがKOHEYとVIGORMANの関係だ。
二人の付き合いは10年以上になる。
それぞれ違う道を歩いてきた二人が、ここ数年になって“現行のジャマイカ”という場所で、再び強く交差し始めている。

KOHEY: なんか数字との戦いじゃないですけど、ちょっと作業になりかかってるところもあって。
その中でVIGORMANがジャマイカでイベントをやったり、現地のアーティストと一緒に動いてるのを見て、僕も結構刺激になったというか。
僕自身も、ここ数年でまたジャマイカとの向き合い方が変わってきましたね。
VIGORMAN: 俺もKOHEYくんの動きにはめちゃくちゃ刺激受けてますよ。
プロデュースをガンガン進めていく行動力とか。
元々もう10年以上の付き合いで、俺が何者でもない頃から知ってくれてるんですけど、近年またDancehallを通して刺激をもらってますね。
――立場や動き方は違うけど、向いている方向が近くなってきた?
VIGORMAN: そうですね。
俺はアーティストで、KOHEYくんはサウンドだったりプロデュースだったり、動き方は全然違う。
でも狙ってるところは一緒というか。
Dancehallというコアなジャンルをこの日本でも広げたいっていうところは一緒やと思います。
VIGORMANがジャマイカで得た実感
今回のDJ MACとの接点は、KOHEYだけではない。
VIGORMAN自身もDJ MACによる「WYFL RIDDIM」に参加。公式リリースとしてはアジア人アーティスト初となる楽曲を発表している。
そこには、VIGORMAN自身がジャマイカで感じたことが大きく関係していた。
VIGORMAN: WYFLに参加したのも、自然とジョグリンの中に入りたかったっていうのが大きな理由のひとつです。
向こうに行くと、やっぱりダンスでかかってるアーティストが正義というか。そこは結構俺も強く感じて。
俺はジャマイカはまだ6回ぐらいなんですけど、去年2カ月ぐらいいた時に結構感覚が変わりました。
そのジャマイカでの経験を象徴する一人が、Stalk Ashleyだ。
二人は楽曲を制作し、ジャマイカではそのリリースパーティーも開催。VIGORMANが長期滞在した際には、Stalk Ashleyの現地でのステージに立つ機会もあったという。

VIGORMAN: Ashleyと一緒にいる中で、リリースパーティーが終わってからも、俺自身にブッキングが来てたわけじゃないのに、何本もライブで一曲歌わせてくれたんです。その中にはSumfestのステージもありました。貴重なライブの時間の一部を、俺のために使ってくれて感謝しかないし、自然な流れで現地のステージで歌えたことが、すごく大きな経験値になりました。
Silent Addy、そしてBASHMENTのその先へ
VIGORMANが近年深く関係を築いているジャマイカ勢は、Stalk Ashleyだけではない。
その一人が、「Shake It to the Max (FLY)」で世界的な注目を集めるSilent Addyだ。

VIGORMAN: Gacha君に紹介してもらってから、Addyとはもう5、6年ぐらいの付き合いになります。去年の2ヶ月間のジャマイカ滞在中もAddyの家に泊まらせてもらってました。
今年の4月にTOKYO POSE POSSEのMao君と一緒に、日本版のBASHMENTの主催もしたんですけど、ああいうのもお金の面だけで言ったら、自分たちには1円にもなってないんですよ。
でも、綺麗事抜きで、そんなことよりもあいつらが「日本ヤバかった」って言ってくれることこそが大事やと思ってます。Silent AddyとDisco Neilとは、現在楽曲制作も進んでて、めちゃ気に入ってる曲が出来てきてるので、その情報公開も楽しみにしててほしいです。
日本とジャマイカ、その両方を本気でやる
VIGORMAN: 日本でめちゃくちゃ刺さる曲を作ることもやりたいし、現行Dancehallに思いっきり振ったこともやりたい。
どっちかじゃないんですよ。
こんだけDancehallをやっておけば、日本人をターゲットにした曲を作った時も「それはそれ」って思える。
「結構、“二重人格”を目指してますね(笑)」
今度は、自分たちが次の世代に見せる
KOHEYがDJ MACとつながり、VIGORMANがStalk AshleyやSilent Addyらと関係を深める。
それぞれ動き方は違うが、その根底にある考え方はよく似ている。“今ジャマイカで鳴っている音”と日本をリアルタイムでつないでいくことだ。
日本のレゲエシーンでは、これまでも先人たちがその時代の海外アーティストを日本へ招聘し、その姿を次の世代が現場で目にしてきた。KOHEY自身も、そうした光景を見てきた一人だ。
だからこそ今度は、自分たちの世代が“今”ジャマイカの第一線で活躍するアーティストを日本へ呼び、その姿をさらに次の世代に見せていきたいという。
KOHEY: 現行だからこそっていうのはありますね。その枠に、あわよくば自分たちが座りたい、みたいな(笑)。
VIGORMAN: 誰もリーチしてない、誰もタッチしてないところっていう意味では、面白さがありますね。
「日本ヤバかった」と言わせたい
そして話は、今回のDJ MAC JAPAN TOURへ戻る。
日本からジャマイカを見るだけではなく、ジャマイカ側からも日本を見てもらう。そのためのひとつの入り口が、DJ MACの来日だ。
KOHEY: MACとか、Addyとか、こっちに来たやつらが「日本ヤバい、日本ヤバい」って向こうで発信してくれたら、「日本ってヤバいんや」ってなると思うんですよ。
日本って音楽のマーケットとしても大きい国じゃないですか。
だからまず日本を楽しんでもらって、「日本ヤバかった」って言ってもらいたい。
そうなったら世界的にも日本を見る目が増えると思うんですよね。
――そして、次にジャマイカのアーティストが「日本に行きたい」と思った時に。
KOHEY: その時に「窓口誰や?」ってなったら、僕らやった、みたいなところまで行けたらいいですね。
無理でも、やりたいことをやってるだけなんで。悔いはないかなって。
現行のジャマイカと日本を、もっと近くする。
その流れの中でDJ MACたちが日本にやってくる。
彼らの目に、今の日本のDancehallシーンはどう映るのか。
そしてジャマイカへ帰った彼らの口から、
「日本ヤバかった」
という言葉を引き出せるのか。
その答えは、今回のJAPAN TOURの現場にある。
Interview & Text by REGGAE ZION
