2023年、ダンスホールの最先端を駆け抜けるHIBIKILLA。のちにByron Messiaの『Talibans』のヒットも生んだ同オケの『WAGMI』で注目を集め、社会の陰りを背負いながらも「再生」をテーマに掲げた12年ぶりのアルバム『KillerTune』をリリース。知性派であり、20年以上のキャリアを誇る彼は、新作で期待に応える独自の創造力と音楽への情熱を見せつけている。


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●前作は2011年のアルバム「FREEDOM_BLUES」から12年が経ちました。この12年間で、時代の変化やコロナといった出来事もあった中で、アーティストとしての成長や変化について教えていただけますか?

HIBIKILLA:世の中的には激動の時代だったと言っていいでしょう。戦争・パンデミック・首相の暗殺ですからね。個人的にも結婚、パートナーの出産、そして離婚という感じで激動でしたねー。「FREEDOM_BLUES」収録曲「Inna Height」で一緒に歌った盟友Bambuも亡くなってしまったし。しかし一般的にはネガティブな要素もそれをネタに曲を作ればポジティブとも言えるわけですから。成長といっていいことかわかりませんが、そういった負けない姿勢だけは崩さなかったと思います。


●アルバムの印象的な1曲目「Neuromancer」のコンセプトについて詳しくお聞かせいただけますか?その背後にある意義やメッセージがあれば教えてください。

ふらっとレゲエバーなんかに行くとボブ・マーリーとかデニス・ブラウンのいい感じの曲が流れてたりするじゃないですか。でもよく考えたらレゲエの大物アーティストはその二人に限らず既に鬼籍に入った方が多いよなと…。ここで、セレクターが曲を再生すると亡くなったアーティストの魂がまさに再生してくるってことじゃんと思ったんですね。さらにセレクターがコマゲン!して曲をリバース(Reverse)すればアーティストの魂がリバース(Rebirth)するじゃんと。
Bambuと作った曲も俺が歌い続ける限りは「再生」し続けるわけでね。レゲエDJという生き方はまさにニューロマンサーつまり脳内の黒魔術師であり、新しいロマン派ということです。


アルバム全体を通して、世界の新しい音楽ジャンルやトレンドに敏感であると感じました。これらの音楽要素をどのように取り入れ、アルバム制作に反映させたのでしょうか?

HIBIKILLA:ここ数年のジャマイカのレゲエ・ダンスホールにもいい曲がたくさんありますが、残念ながら国際的なヒットに繋がった曲は少ない。しかし、少し視野を広げればナイジェリアのアフロスイング、南アフリカのアマピアノなど、明らかにダンスホールに影響を受けたジャンルが盛り上がっていますよね。

で、それこそ「Talibans」なんかはナイジェリア人のプロデューサーが作ったトラックがジャマイカに逆輸入されてヒットになっているわけです。
もちろんレゲエ・ダンスホールの故郷はジャマイカであることは間違い無いんだけれども、2023年の今はそういったミクスチャー的な解釈がHotだと思ったのはあります。


「WAGMI」では、後に『Byron Messia / Talibans』で大ヒットしたナイジェリアのプロデューサー・Eastbirdの同トラックをいち早く起用して話題となりました 。通常、このようなトラックやプロデューサーをどのように見つけ、選定していますか?

「WAGMI」はタイプビートを販売するwebサービスがあって、そこに落ちてた「Burna Boy & Skepta Type Beat」をリース契約しました。さらに2022年5月にリリースしているから「Talibans」よりも先ですよ。こういうのは他のジャンルだと「ネタかぶり」などと批判されることもあるようだけど、レゲエは元から一つのRiddimに複数アーティストが乗っていく文化がありますからあまり抵抗はなかった。

パンデミックをきっかけにオンラインでどれだけ制作できるかみたいな機運が広がったのも、音楽制作の新しいやり方をトライするきっかけになったという意味で自分にとってはある意味よかったと思う。


R&BシンガーのLayaやkotaなど、レゲエファンにはあまり馴染みのないアーティストとのコラボレーションが印象的でした。このコラボが実現した背後にあるストーリーを教えていただけますか?

これもインターネットのおかげってところがあるかも。KOTAくんはTuneCore Japanのブログきっかけで「Die」という曲を知って、とてもいい歌を唄うシンガーだなと思ってたんですね。そしてたまたま渋谷でライブがあるってことで速攻見に行ってね。そこで初めましてのご挨拶をさせていただいてすぐに意気投合しました。

Layaちゃんもそうだけど本当に歌唱力があるアーティストさんはジャンル関係ないですから。レゲエファンの皆さんにもぜひ聴いてもらいたいです。


HIBIKILLAさんは音楽業界においてNFTを先駆けて取り入れ、独自の取り組みを行ってきました。新アルバムの収録曲もNFTとして販売されていますが、アルバムに関連したNFTについて詳細を教えていただけますか?

KOTAくんをフィーチャーした先行シングル曲「Yohaku&Sentence」はコラージュ写真アーティストNOAKさんの同名作品から拝借したものです。

それから「Neuromancer」はドット絵アーティストNiraさんとのコラボ作品として10月28日のNiraさんの個展で発表されます。そうやってデジタルアートとして自分の音楽をコラボさせていく点においてはNFTは本当に便利。
NFTはいっときのバブル的な人気こそなくなりましたが、非中央集権的ネットワークの中でブロックチェーンを使いデジタルアセットに資産性や流動性を持たせていくというそのコンセプトは今なお非常にクールだと思っています。


最後に、日本のレゲエファンに向けてメッセージをお願いできますか?

「FREEDOM_BLUES」から12年っていうのは思ったより時間が空いてしまったんですが…今までの作品が俺の青春だとしたら、この「KillerTune」は俺の人生なんです。アルバムのラスト曲「そして人生が始まる」はそういう意味。MVもあるからチェックして欲しいです。…いやなんかヌルッと復帰したくなかったんですよね。アルバム制作は時間もお金もかかるんですが、そこを勝負しないのは自分的に無しだと思ったからこれに賭けましたね。

あとはもうライブしたいっすね。とりあえずアルバムのリリパは11月18日(土)東京のClub Cactusでやります。そして2024年は各地のイベント、特にハイエストマウンテンに出たいな。一回もちゃんと出たことないんですよ!レゲエDJならMurasakiさんの似顔絵であのポスターに載ることに憧れますからね。よろしくお願いします!






HIBIKILLA KillerTune RELEASE PARTY
日程:11月18日(土)
会場:CLUB CACTUS 詳細はこちら>

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