Text by : 八幡浩司(24x7 RECORDS)
Photo by : 宮田維人


 「人」ー。「ヨコスカレゲエバッシュ実行委員長」と書かれた名刺を手にして現れたRUEEDに、そのフェスの開催地である横須賀の魅力について尋ねるとそう答えてくれた。


ヨコスカレゲエバッシュ ー。

RUEED「横須賀は米軍基地と共存している海の方もあれば、住んでいる人が少ない山の方もあったりして結構広いんですけど、隣接している横浜と比べるとどこかトッポイ感じなんですよね。確かに昔から不良とか少し厳しい人達もいますけど、何かを本気でやっているとそれを本気で応援してくれる人達、そうした熱い人達がいる場所だったりもして、そうした『人』が横須賀の魅力だと思います」。


●その横須賀で昨年から「ヨコスカレゲエバッシュ」を開催しています。

RUEED「これまでにボンヤリと自分でもフェスをやりたい、『横浜レゲエ祭』や『ハイエスト・マウンテン』みたいなフェスを自分でもやりたい気持ちはあったんです。何かそれに向けて実際に行動していたわけではないですけど、それよりも目の前のことに必死に喰らい付いていくような10代~20代を過ごしていましたので。ただ、30歳を超えてから、昨年に自分の活動20周年を迎えた時にその節目として『何をしよう?』と考えた時にそれを思ったんです。ベスト・アルバムのリリースやワンマン(ツアー&コンサート)とかも考えたんですけど、それを『地元でやりたい』って思ったんです。もう完全に思いつきで、見切り発車でしたけど、それで初めて開催したのが去年でした」。


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写真提供 YOKOSUKA REGGAE BASH


●まだ30代ですよね? もう20周年だったんですか?

RUEED「35歳です。ただ、自分がマイクを握り始めたのが15歳でしたから。『ROAD TO 横浜レゲエ祭』は18歳の時、2007年でした。それに優勝して『横浜レゲエ祭』に出たことが自分を広くに知ってもらえるきっかけになりましたけど、その『横浜レゲエ祭』が昨年で終わることになっていたのもフェスをやる気持ちを後押ししたのもありました。上の世代が作ってくれたものが無くなるのであれば、それに代わるものを自分達の世代が作っていかないといけない気持ちにもなりました。誰かが作ってくれるのを待つんじゃなくて、無いものは自分で作っていくしかないという考えはずっと持っていましたから」。

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地元・横須賀 ー。

●地元でやりたかった理由はなんですか?

RUEED「ずっともどかしい部分が自分の中にあったんです。横須賀の人達って『横須賀ラブ(地元愛)』が強いんですけど、自分は10代の後半で横須賀を離れて東京に移っていることで、どこかで『横須賀を捨てたように思われているんじゃないか?』とか、実際にはそんなことは全く無くても自分で疑心暗鬼になったりもしていて、ずっと『何か横須賀へ恩返しできないか?』、かつ『何かでレゲエを盛り上げることができないか?』と思ったんです」。


●どうやって開催を実現させたんですか?

RUEED「どうやって・・、もう、それは自分で企画書を書いて・・。ええ、自分で企画書を書きました、相当に熱い想いを込めた企画書を書きました。それを自分で横須賀の市役所に『やらせてください』って持って行きました。それで自分の熱い想いを伝えつつ、横須賀市は『音楽の街』を謳っているので、市役所の人達にも『音楽の街として是非このレゲエバッシュを実現しましょう』と口説き落とす感じでした」。

●レゲエのフェスとなると横須賀市と言うか、行政もそうは簡単には承諾してくれなかったのではないですか?

RUEED「横須賀では91年~94年に『REGGAE JAPANSPLASH』が何万人も集めて野外で開催されていたこともあって、話をさせて頂いた方々の中にはその当時にそれに関わっていた方もいたんです。そうした方にはその当時にそれで街が賑わった記憶もあって『レゲエいいじゃないか』みたいな感触を頂けたりもしました。あと、横須賀市には市として抱える問題もあって、横須賀は過疎と言うか、現在は人口が減っていたりもするんですけど、もっと横須賀に人が来てもらえるようにしたい、横須賀を知ってもらえるようにもしたいという想いが市の方にもありましたので、フェスを『町興し』の一環として考えて頂けて市としてフェスに後援して頂けるようになりました」。

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写真提供 YOKOSUKA REGGAE BASH

●会場を三笠公園にしたのは理由は?

RUEED「三笠公園はもともと自分が遊んでいた公園、それこそMARSHALL LAWやMURDER ONEのサウンドでマイク握らせてもらったりした10代の頃の思い出がある場所なんです。あと、横須賀市としても三笠公園に来る人が減っている中で公園をもっと有効利用したい考えもあったりもしました。正直、最初は公園の中に小さな音楽堂があるんですが、そこを使って千人規模で開催する予定でしたけど、市の方からより多くの人達を集められるようにと『ここの水を抜いたらもっと会場を広く使える』と提案されたりもして計画を変えた感じでした。で、そこからはその開催に必要となる経費を算出してスポンサー集めに動きました。それも自分で一つ一つ連絡させて頂いて話をしに行かせてもらうようにしました」。

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写真提供 YOKOSUKA REGGAE BASH

無料開催 ー。

●昨年もですが、今年も無料開催。昨年も一万人を超える動員でしたけど、その規模のフェスを無料で開催することはスポンサーが在っても大変ではないですか?

RUEED「大変と言えば大変です。今年は二日間開催にもなりますし。それもあって今年もクラウドファンディングを実施しています。ただ、正直いつまで無料のままに開催できるかはわからないです、それぐらいの経費は掛かってますから」。


●それでも無料開催とする理由はなんですか?

RUEED「こっちから『横須賀に来てください』と呼び掛けておいて『お金払ってください』は少し違うように思ったからです。あと、横須賀だけではなく『レゲエを知ってください』という想いもありますので」。

●レゲエを知ってもらう。

RUEED「自分がレゲエを聴き出した頃、2000年代の始めの頃と比べるとレゲエの勢いや人気はかなり落ちてしまっていますし、最近のヒップホップの人気で自分も若い子から『RUEEDくんのラップがいいですね』と言われることもあったりもして、レゲエのことが知られていないことを実感しているんです。でも、最近の『レゲエがキテる』じゃないですけど、そうしたヒップホップとかを通じてレゲエに興味を持っている若い世代が増えているのも感じているんです。そうですね、CHEHONとかがMCバトルに出ていたりする効果もあると思いますけど、実際に自分が出演するレゲエの現場にも若い世代の客が増えてきているのも感じています。そうした若い世代にレゲエをもっと知ってもらいたいんです。こんなに良いアーティストが今のレゲエにはたくさんいることを。あと、アーティストだけではなくサウンド専用のステージも用意しますので、サウンド・システムというレゲエならではのカルチャーがあることも伝えたい想いがあります。『観に来てダメだったらそれは仕方ない、でも、まずは知ってもらう機会を作りたい』という考えで、無料にすることでより多くの人達に来てもらえる、来やすくさせることが出来ると考えました」。

●シークレットを除いて全ての出演者が発表されています。

RUEED「昨年は自分の想いを伝えて賛同してくれた人達に出演を依頼した感じでしたけど、今年はそれに加えて更に幅を広げて自分が観て欲しい人達に出演してもらうことにしました、勿論、それぞれに別の予定や都合もあって完璧とは言えないですけど、自分から声を掛けた人達ばかりです。無料だからと言って決して無料の価値の出演者ではないです。出演するアーティストの世代を幅広くしたかったのは若い世代のアーティストを知っている人達にはその上の世代を、上の世代のアーティストを知っている人達には下の世代も知ってもらえるようにしたかったからです。例えばJ-REXXXを知っているのなら、J-REXXXを通じて来てもらって他のアーティストを知ってもらえたり、よりレゲエに興味を持ってもらえるようになるといいな、って感じですね」。


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「自分一人でやれているわけではない」 ー。

●あの、スイマセン、RUEEDさんとは何度も会ってますけど、実際にちゃんと話すのは実は今回が初めてで、正直自分が思っていたよりも熱いと言うか、それが横須賀の人である証拠なのかもしれないですけど、もっとRUEEDさんはクールと言うか、孤高と言うか、自分からは周りとはそこまで連んだり混じらないイメージを勝手に持ってました。今も自分ではなくてJ-REXXXの名前を出しましたけど、もっと自分中心と言うか、そうした考えで活動されていると思ってました。
RUEED「いや、そうだったと思います。若い頃は特にそうでしたし。ただ自分のことだけを考えていたと言うか、他をあまり意識していなかったと言うか、それだけ自分のことだけで必死だったとは思います」。

●何がきっかけで変わったんですか?

RUEED「30歳を過ぎた頃からですね、自分一人でやれているわけではないことに気付かされたのは。周りがあって自分ができていることに気付いたんですよね。それもそれだけの経験を重ねたからだと思いますけど、その頃からある程度自分の中でアーティストとしてやってきたことへの自信も持てるようになったのもあると思います。それで『自分がレゲエを背負う』と言うと大袈裟かもしれないですけど、それぐらいの覚悟を持てるようになったことで変わったとは思います。フェスもそうですけど、自分だけではなく他のアーティスト達も一緒にもっと全員が大きな固まりとなって渦を起こして、全員で上がっていけるようにしたいと思っていますし、もう自分だけのことだけを考えてはいないです」。

●RUDEBWOY FACEとはずっと盟友であるイメージは持ってました。

RUEED「そうですね、RUDEBWOY FACEぐらいですね。少し年は離れていますけど、RUDEBWOY FACEはもともと自分がファンだったのもあって、自分から構って欲しくてしつこく付きまとったりしたんです(笑)。どこかのタイミングでRUDEBWOY FACEの方からも話してくれるようになって、突然に『行くぞ』と言われてダンスの場で二人でマイクを握りに行くようなこともありましたけど、それからはずっとそんな関係ですね。自分から見てRUDEBWOY FACEに一番『レゲエ』を感じたんです、曲とかだけでなく立ち振る舞いとかにも。あと、自分のレゲエの先生だったりもして、TERRY GANZIEのヤバさを教えてくれたりしましたし(笑)。今も二人で一緒にサウンド(SOUND MAGNUM)をやってますけど、それも単純に自分達が好きでヤバいと思う曲を掛けたくてやってます」。

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レゲエの魅力 ー。

●自分がRUEEDさんを知った時のはそれこそ2007年の「横浜レゲエ祭」で、その時には既にアーティスト、DeeJayでしたけど、そもそも始めたきっかけはなんだったんですか?
RUEED「14歳の頃なんですけど、その当時に自分の兄貴(窪塚洋介)が映画『狂気の桜』に出演して、真柄さん(真柄尚武 / MASTERPIECE SOUND)やジュンさん(加倉井純 / mdp)とか東京のレゲエやヒップホップ関係の人達と仲良くさせて頂くようになって、それでそうしたCDやミックス・テープが横須賀の実家にあったんですけど、兄貴が家に出る時に残していったものを聴き漁るようになったんです。それで当時にMTVとかスペースシャワーTVで放送されていたヒップホップやレゲエを特集した番組も見るようになったんですけど、一番最初はDJ、そうした番組で見た(レコードの)二枚使いやスクラッチをするバトルDJに喰らって『コレやりたい』って思ったんです。で、そう沸々と思い始めていた時に兄貴がキング・ギトラの復活ライヴのチケットをくれて観に行って、ライヴというものも体感するんですけど、その時も『MCではなくてDJやりたい』って思ったんです」。

●最初はマイクを握るつもりではなかった?

RUEED「そうです。で、その頃に兄貴は飛ぶ鳥も落とす勢いと言うか、俳優としてすごく仕事していて、本人もまだ若くてイケイケだったと思うんですけど、誕生日かクリスマスの時に兄貴に東京に呼ばれて『欲しいものをなんでも買ってやる』と言われたのでターン・テーブルを買ってもらったんです、中学二年だったと思います。そこからレコードを買い漁るようになるんです、何もわかってないから『ジャケ買い』とかして。ただ、バイト代を全部レコードに当てていましたけど、レコードはお金が掛かるからそうは買えなくて、お金が掛からないからってDJのサブではないですけど、曲を書き始めるようになったんです。その頃はちょうどレゲエが流行っていて、周りでも(年齢が)一個上とか二個上の人達がクルーを組んだりしていたので、それに自分も混ぜてもらうようになって、次第に『あっ、俺レゲエ好きだ』みたいになっていったんです。それで、クルーの年上の人達が高校卒業を機に就職とかで仲は良いままにバラバラになっていく中で、より歌の方が自分のメイン軸になってきていて、そこから自分レゲエDeeJayがメインへとなっていった感じです、もう自分でレコードでオケかけて(リディム・トラックを流して)、マイクを握ったりしてました。高校の時にはそうやって始めてましたね」。


●ヒップホップからレゲエへ。

RUEED「レコードはヒップホップにレゲエをブッ込んだりして関係なく回していたんです、よくわかってなかったので。でも、レゲエを回している時に感覚的に気持ち良いと思ったのはありました。それで、レコードもレゲエの7インチを買うようになって、SUPER CATとか、あとジャマイカの『STING』のライヴDVDに『ヤベぇ』ってなっていくんです。ただ、もともと自分は兄貴からのCDとかで『ジャパレゲ』も聴き漁っていたので、その当時はMOOMINとかRYO the SKYWALKER、あとFIRE BALLとかを聴いてましたけど、それが歌を書くことを後押ししてくれています。そうですね、自分のレゲエの入口は当時の『ジャパレゲ』と言っていいと思います」。


●その10代で出会ったレゲエをこれまでに20年以上、現在に「レゲエを背負う」と発言されたり、「レゲエを知ってもらいたい」とフェスを開催されるまでに続けて来られていますが、そのレゲエの魅力をRUEEDさんは何と説明しますか?

RUEED「他には無い魅力を自分で体感していたり、SUPER CATが何よりも自分のアーティストとしてのアイコンになっているのはありますけど、自分がこれまでにダンスホールDeeJayを突き詰めてきた中では、『なんでも有り』って言うか、『何を言っても構わない』というところでしょうか。自分が言いたいことを言葉にして曲として伝えられるところだと思います。さすがにこれだけ社会がおかしいと、そりゃ言いたいことも言わないといけないこともありますから、そうした自分の考えを曲のメッセージとして伝えられるところだと思います。それを聴く側がどう判断するのかはわからないです。ただ単に曲として聴き流す人もいるとは思いますし、それはそれで構わないです。ただ、自分の曲を通じて何かを感じたり、何かのインスピレーションやきっかけ、気付きになってもらえたらとは思っています」。


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ブレない ー。

●RUEEDさんが出会った頃とレゲエも変わっています。
RUEED「変わっていますね。でも、『SLENG TENG(85年の初の全編打ち込み / コンピューターライズド・リディム)』が登場した時もそうだったんだろうと思っています。その当時にも生音からデジタルに変わったり、ルーツ・レゲエからダンスホールがメインに変わったことで『もうそれはレゲエではない』と離れていった人達もいたと思います。でも、『SLENG TENG』の時もきっとそうだったように、その本質は変わっていないと思っていますので、その変化も含めて自分は楽しめています。現在のジャマイカのダンスホールの行き過ぎた暴力的な部分には思うことはありますし、そうした部分が目立つのは仕方ないとも思いますが、それだけではない魅力が変わらずにありますからそうした部分をもっと伝えていけるようにはしたいとは思っています」。

●現在の日本のレゲエ・シーンはどう見てますか?

RUEED「新しい世代のアーティストは増えてきていると思います。世代によってレゲエへの入口も違いますから、自分とは感覚的に違うアーティストもいますけど、色々と違っていていい、『そっちはそっちで』ではないですけど、それぞれのやり方や表現でやればいいとは思っています。ただ、そうしたアーティストの客も全部自分が奪い取るぐらいの気持ちでやってます」。

●RUEEDさんはレゲエ以外のこと、アーティストやDeeJayとしてではなく、例えばロック・バンドにヴォーカルとして参加していたり、役者の仕事もされていたりと幅広く活動もされたりもしています。

RUEED「それもDeeJayとして、自分がレゲエのアーティストとしての自信を持てるようになったからです。そうでなければやってないですし、実際にそれまではそうしたのは断ってました。そうした他の活動の場でもレゲエのアーティストとしての自分を、レゲエを通じて身につけた自分の感覚をどう活かすかを意識しています。自分を通じてレゲエを知ってもらえるようにすることも意識しています。フェスもそうですけど、アーティストやDeeJayとしてだけではなくやりたいことはありますし、これからもやりたいことはたくさん出てくると思いますけど、ずっと変わらないでブレずにやっていくと思います」。


●ブレない。

RUEED「ブレないです。レゲエが自分の軸であること、それはブレないです、これからも」。




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YOKOSUKA REGGAE BASH 2024
9月22日(日)& 9月23日(月・祝)
会場 : 横須賀市・三笠公園
10:00開場 / 12:00開演 / 19:30閉演
入場無料

WEB : https://www.yokosukareggaebash.site/
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クラウンドファンディング 
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