1.  Michael Gordon - Love Is in the Air

ラヴァーズ・ロックの名バンド、インヴェスティゲーターズのヴォーカリストとして知られるマイケル・ゴードンのソロ作。派手さはないかもしれないが、ファッション・レコードの抜け目ないサウンド・プロダクションが光る逸品。「誰かの恋人になりたい、ひとりぼっちは飽き飽きだ、 明日女の子と会うんだけど、恋に落ちればいいね、愛はそこら中にあるのに… 真実の愛を見つけた奴がいてラッキーだよな、俺も幸せになりたいぜ」と、静かな昼下がりにでも聴きたい、ほのぼのとしたラヴソング。独り身の男にとってバレンタインデーは地獄である。


2. Peter Hunnigale - Be My Lady

あの『Perfect Lady』でお馴染みのUKレゲエ・シンガー、ピーター・ハニーゲイルの代表作。 持ち前の蜂蜜のような甘い歌声で歌う極上のラヴソングはまさに絶品である。"僕からの愛のギフトを貰ってくれることを願うよ"なんてジェントルなフレーズも彼らしい歌詞といえる。バレンタインデーというのは海外だと男女がお互いに愛や感謝を伝え合う日である。皆さんも意中のあの子にバラを贈ってみてはいかがだろうか?ちなみにバラは贈る本数で意味が変わってくる。三本贈れば"愛の告白"。


3. Sugar Minott - My Love Is True

シュガー・マイノットお得意のやさしいメロウ・チューン。同曲は彼のルーツ・ロックとラヴァー ズ・ロックがハーフ&ハーフで味わえるアルバム『Roots Lovers』に収録されている。バッキングにはホース・マウスやジャッキー・ミットゥ、パブロ・ブラックなどが参加し、おまけにコクソン・ドットがエンジニアを務めているという事もあり、この曲だけ完全にスタジオ・ワンのサウンドなのだ。"もう恋なんてしないって言う人も多いようだけど、それはどうなんだろう?だっ て僕には愛があるんだもん、だから、何人もの女の子が僕の心を引き裂こうとも、僕は毎日を愛し続ける、君への僕の愛が真実だと知っているのさ"と、ゆったりとした浮遊感のあるトラックで愛の大切さを歌っている。


4. Carroll Thompson - Hopelessly In Love

クイーン・オブ・ラヴァーズ・ロックの異名をもつキャロル・トンプソンの代表曲。"花が雨を必要とするように私はアナタが必要なの、すべて上手くいくと言って、私はどうしようもないほど恋してるの"といった、ピュアでセンチメンタルな女心を歌っているラヴソング。色褪せない不朽の名作とはまさにこの事。昨年、40周年記念でトロージャンから復刻版がリリースされていたので是非チェックしてみていただきたい。


5. The Skints - Let's Stay Together

僕の大好きなUKレゲエ・バンド、スキンツによるアル・グリーンの名曲カヴァー。"どうして皆んな別れて、また付き合ったりするのかな、理解できないよ、君はそんな事しないでしょ? 君と過ごすことが、僕の望みなんだ、だから一緒にいようよ"と永遠の愛を誓うプラトニックなラヴソング。よくカヴァーされている歌だが、その中でもダントツで素晴らしいラヴァーズ・ロック・アレンジで、ドラマーのジェイミー・キリアキデスが本家さながらの美しい歌声を聴かせてくれる。 愛する人とともに芳醇なワインでも呑みながら、この魔法のグルーヴに酔いしれたいものだ。ちなみにスキンツのカヴァー・ヴァージョンは正規でのリリースはされておらず、彼らのライブもしくは公式ユーチューブでしか聴くことができない。


6. Maxi Priest - Every Little Thing

世界的に有名なラヴァーズ・ロックの貴公子、マキシ・プリーストによる2013年の作品。80年代の頃よりも深みを増した歌声。"君の為なら何でもしたい、本当さ、どんな些細なことでもね"と 情熱的かつ王道なラヴァーズ・ロック・スタイルは何年経とうとも健在だ。特別な誰かを思い浮かべながら聴いてみると心に沁みてくる… 彼女への思いやりは大切にしないとね。


7. J.C. Lodge - Too Good to Be True

J.C.ロッジのアルバム『I Believe In Love (1987年) 』に収録されている名作。この曲はマイキー・ベネットによって書かれた作品で、アレンジは異なるがグレゴリー・アイザックスやラディー・トーマスもグリーンスリーブスから同曲をリリースしている。男性目線も良いのだが、やはり女性目線で歌われた彼女のヴァージョンを個人的にオススメしたいのだ。愛する彼と初めて迎えた朝のシチュエーション。ずっと夢見ていた事が現実になり"アナタと一緒に目を覚ますなんて信じられないわ"といった、なんとも微笑ましい女心が描かれている。"So good…"という言葉とともに間奏はディーン・フレイザーのサックス・ソロへ繋がり、そこに彼女の溢れる吐息が絡んでくるドラマティックなニクい演出。最後のオチは”昔みたいにアナタを追いかける必要はないのね、だってディナーがブレイクファーストに変わったもの”なんて、もう百点満点のパンチライン!!まるで映画のような大人のラブ・ロマンスを聴かせてくれるジャマイカン・ラヴァーズ・ロックの最高峰だ。


8. Hollie Cook - Sweet Like Chocolate

シャンクス&ビッグフットによるUKガラージの名作を見事なラヴァーズ・ロック・サウンドにアップデートした絶品カヴァー。ホリー・クックの持ち味とも言えるメロウでアンニュイなヴォーカルが、楽曲の良さをより一層引き立たせている。タイトル通り"アナタは私に幸せを運んできて くれる、まるでチョコレートのように甘い男の子"というベタベタに甘ったるい内容。バレンタインデーにチョコレートを贈る文化の日本人にとっては、ピッタリな一曲かもしれない。この曲が7インチでリリースされた際に僕も購入したんだけど、ミルク・チョコレートのような茶色いスリーブに入ったレコードがラベル・シールの雰囲気の効果もあいまって本当にお菓子っぽく、とても美味しそうに見えた覚えがある(笑)


9. asuka ando - あまいひとくち

日本の現行ラヴァーズ・ロック・シーンをリードする歌姫、asuka ando。キャリア初期は「Asuky」名義で数々のコンピレーション・アルバムに足跡を残す。その後、本名である「asuka ando」に改名し、2011年にミニ・アルバム『dream of you』を発表。本格的にラヴァーズ・ロッ ク・シンガーとしてのキャリアを歩み始める。2015年には『ゆめで逢いましょう ∼see you in my dreams∼』が大きな反響を呼び、レゲエ・シーンのみならず多方面での認知を獲得する。この『あまいひとくち 』はそんな彼女の代表曲のひとつ。リー・ペリーがヴィン・ゴードンをフィー チャーしたトロンボーン・インスト『5 Cardiff Crescent』をリディムとして解釈し、日本語の歌詞を添えてアップデートした作品だ。マニア心をくすぐるアスカちゃんのセンスには毎度敬服させられる。この曲を聴いて大切な人とロマンティックなひとときを!


10. フランキーパリス - それは恋かもしれない

最後に手前味噌ではありますが、自分がプロデュースした楽曲をひとつご紹介。ダンスホールからラヴァーズ・ロックまで幅広く乗りこなすシンガー兼ディージェイ、フランキーパリスと関西の新星ラヴァーズ・ロック・バンド、Bagus!による合作。"ラヴァーズ・ロックはこうじゃなきゃダメだ"という考えを捨てて、型にはまらない自由な発想を持ち寄って作った結果、独特な世界観に仕上がった。時折、渋谷系っぽいという意見も寄せられるが、たしかにそんな気もする。



さて、本日はバレンタインデーだ。きっと読者の皆さんもワクワク、ドキドキさせて胸を高鳴らせているでしょうが、今回ご紹介した珠玉のラヴァーズ・ロック10選を聴いて"それが恋かもしれない"瞬間が生まれる事を願います。



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【ZUNGGU ZUNGGU Profile】

大阪府出身在住。
10代よりセレクター(※レゲエ界における「DJ」の意)を始め、現在はシーンの一線を走るレゲエ・サウンドクルー『EMPEROR』所属。クルー内ではオールドスクール担当として古き良きジャマイカン・ミュージックを選曲している。
中でもUK発祥の『LOVERS ROCK』と呼ばれるレゲエのサブ・ジャンルに傾倒し、2020年にはラヴァーズ・ロック専門レーベル『IT'S A ROMANCE』を発足。

翌21年には更にプロデュースに注力するため『Bagus!』の白川大晃、小西誠らとプロダクション・チーム『Love Letter Revue』を結成する。
同年12月には自身が執筆・監修を務めラヴァーズ・ロックの専門書『LOVERS ROCK Record Guide Romantic Reggae Selection 1970s-1990s 』をリットー・ミュージックより上梓。これは、同ジャンルを扱ったものとしては“世界初”となるガイドブックであり、国内はもとより海外の好事家からの問い合わせも殺到。シーンの内外より大きな注目を集める!!

「プロデューサー / DJ / 音楽ライター」と、二足のみならず三足のわらじを履き、このカルチャーを多くの人に伝えるべく日々奮闘中。
Instagram: zungguzunggu
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