interview & text:Seira Yonamine


ルーツ・レゲエ・バンド、Youth of Roots(ユーツ・オブ・ルーツ)のフロントマンであるKON RYU(コンリュウ)は、ジャパニーズ版クロニクスともいえるようなスピリットでレゲエ・ミュージックの本質であるポジティブなメッセージを響かす、弱冠21歳のアヤナイ(I&I)・ソルジャー。


ラスタファーライと宇宙の摂理、スピリチュアルとワンラブ、JAH MUSICのメッセージを掲げ、レヴェルなレゲエ・アーティストとして彼が伝えたいこととは。

レゲエザイオン特集「進化 〜Evolution〜」企画スペシャルインタビュー。


S__6127659.jpg

【Youth of Roots Profile】
神奈川県横浜出身のルーツレゲエバンド。
ポジティブマインドに導くレゲエの精神性、生きる意味を教えるラスタファーライの精神性とパワフルなレゲエミュージックの音楽性に感銘を受け、日頃日常で感じたり思うところからくるリリックスにレゲエのメロディとヘビーなサウンドを乗せて現代の日本社会=ファミリーとバビロンマインドに向けてメッセージを発信中。
2016年結成。今までに色々なメンバー達と共に日本各地でライブ経験を積んだのち、ジャマイカと日本でオリジナルのレゲエ楽曲を意欲的に制作。7インチレコード、CD、デジタル配信あらゆる形で音源をリリース中。
またバンドならではの最先端のライブアレンジやパフォーマンスも好評価されている。 
Instagram: @konryu____




●音楽活動を始めた経緯を教えてください。

KON RYU:音楽家である父(KON KEN)の影響です。8歳の頃にディージェイ・スタイルでダンスホールを歌ったのがきっかけです。
その後、歌っているうちにミュージシャンになりたくなって、中学一年生の時にギターを弾き始めました。それでKON KENがやっていた「拳POWA」というバンドでフロントアクトを務めたりサイドギター兼MPCとして加入して、RANKIN TAXIなど色んなレゲエ・アーティストのバックで演奏をさせてもらいました。ちなみにその後、拳POWA BANDが改名してYouth of Rootsになります。


拳POWA BANDでライブをこなしていくうちに、レゲエをやる上で必要な知識をつけてきましたね。その後ジャマイカの大学に入学して音楽のセオリーを習うんですけど。


●Youth of Rootsに改名したのはいつですか?
KON RYU:
2016年。16歳です。今は21歳です。

S__6234116.jpg

●音楽を始めた当初は自分の意思でやりたいと思っていたんですか?
KON RYU:
周りの大人にけしかけられて。でもステージに上がるのが楽しくて、そう思うと自分の意思もあったのかもしれないです。


●自然な流れだったんですね。
KON RYU:
そうですね。赤ん坊の頃から、毎年夏は葉山の海の家のオアシスにいて、そこで夜な夜な行われるライブやミュージシャンとは身近な環境にいたので。


●当時はどういう気持ちで音楽をやられていたんですか?
KON RYU:
歌うのが好きで、少しずつオリジナルソングも作ったりするようになって、バックバンドで出演したショーの前座で拳POWAバンドとしてオリジナル曲を歌わせてもらったり。ライブは緊張したけど、盛り上がったしとても楽しかったです。ピュアにやっていました。


レゲエの曲だったり、当時はアメリカンポップスも好きだったりしたので、そういう曲もあったり。14~15歳の時ですね。


●オリジナルソングではどういう歌詞を書いていたんですか?
KON RYU:
始めて書いた曲が「散歩」っていう曲なんですけど、これは当時飼っていた犬と散歩に行くのが好きだったので、その事や地元の落ち着く感じの雰囲気をお寺の裏の原っぱで考えたり。


あとは「Life Goes On」というオリジナルのGod bless tuneをライブでよく歌っていました。その曲は14歳の時に家族旅行でジャマイカに行った時に、キングストンでRaging Fyah主催のライブがあって、そこで彼らのパフォーミングを見て感動した時の影響で出来た曲です。良い感じの歌なんで今後リリースしたいと思っています。


●家族旅行でジャマイカ。素敵ですね。
KON RYU:
STONE LOVEのダンスに行ったり、オーチョリオスで海に入ったり。帰りにニューヨークに寄って、みんなでガッツリ楽しみました。


その年は若い世代のラスタによるルーツ・レゲエ・リヴァイバル・ムーヴメントが盛り上がっていて、第一印象としてそれがかっこよくて、その時に初めてラスタファーライに興味を持ちました。


●日本の音楽界ではもちろん、新世代のジャパニーズ・レゲエシーンでも珍しい「ルーツ・ロック・レゲエ」をやっていますが、なぜそのスタイルを選んだのでしょうか。
KON RYU:
ルーツ・レゲエの持つポジティブなメッセージがシーンに必要だと思っています。


Raging Fyahというルーツ・ロック・レゲエバンドに出会ったこと。ジャマイカで”ルーツ・リヴァイバル・ムーヴメント"が起こっていたこと。

そして日本でもルーツ・レゲエの現場にいくことがあって、そこでルーツ・アーティストとガイダンスがあり、自然にルーツの現場でパフォーマンスをするようになって今のYouth of Rootsになりました。

楽器をやっている人はルーツ好きな人が多いし、日本にもルーツ・バンドは沢山いますよ。


2000年代に日本でダンスホールが流行ったじゃないですか。その頃のショーでは一つのバンドが沢山のアーティストのバッキングをやるスタイルや、アーティストとプロデューサー(トラックメイカー)で曲を作るっていうのがオーソドックスだった中で、Raging Fyahのバンドパフォーミングを目の前で見たときに全然違くて。

一つのバンドに一人のボーカルっていうのが、昔は普通だったと思うんですけど、それがカッコよくてしびれちゃって。だからバンドスタイルでっていうのがありますね。

S__6127665.jpg
 

●親子でバンドを組むというのはどういう感覚なのでしょうか?
KON RYU:
前は恥ずかしさとかもありました。それこそ高校生のときはラブソングを聞かれたくなかったですね(笑)でも、結局「レゲエ」っていうのを理解していく中で消化できてきました。


基本僕の書く歌詞を軸にKON KENと話し合って作っていくというのが、Youth of Rootsの音楽が広がっていく要素だと思っています。


●現在はジャマイカの芸術大学の音楽部に通われていますよね。
KON RYU:
はい。日本でも活動しているBlack Bloodっていうレゲエバンドのベーシストでイアンっていうラスタマンがエドナ大学の存在を教えてくれて、興味を持ちました。

僕は音楽以外に特にやりたいことが無かったので「ジャマイカに行けるなら行きたいな」と思っていたら運も重なって行けることになったんです。2年生を修了して、今は休学しています。復学したら3年生です。


●どういうことを学んでいるんですか?
KON RYU:
アメリカのバークリー音楽大学の教科書を印刷した冊子が教科書になっているので(笑)、世界基準の音楽理論とジャズ、ポップスを学びました。


専攻がボーカルだったので歌の授業と他にはピアノや太鼓の授業があったり、哲学や批判的思考などの座学の授業もありました。

ポップスアンサンブルの授業では毎学期クラスメイトと1時間ほどのショーを作り上げたり。あと毎週木曜日に大学のホールで開かれるランチアワーコンサートっていう発表会で学期に一回一般のお客さんの前で実践的で緊張感のあるステージでのテストもありました。フォーマルなステージでのマナーなども教わりました。


●歌唱力も素晴らしいですよね。
KON RYU:
大学で担任のボーカル講師にマンツーマンで教えてもらっていましたし、日本でも色んな方に歌の指導は受けてきました。


●学校は楽しいですか?
KON RYU:
結構大変でした(笑)
僕は入学した時に明確な目的を持っていたわけではなくて、他に選択肢がない状態で軽い気持ちで大学に行っちゃったので何も考えていなかった分、何かと衝撃が大きくて大変な2年間でしたね。


変にカッコつけちゃって1年目は信頼できる友達もできなくて。フェンス越しの隣にあるドミトリーの寮で一人ぼっち。2年目は気分転換で寮から離れてサーフポイントがある"ブルベイ"という地域に移動しました。

スケートやサーフカルチャーで盛り上がっている"Jamnesiaっ"ていうライヴもできるゲストハウスの近くにあるアパートの一室をビデオグラファーの奴にシェアしてもらって住んで、そこからバスで片道1時間を毎日通っていました。

のちにJamnesiaに空きが出たので、そこのゲストへの食事を作ったりして安く宿泊させてもらってました。Lila Ike、Micah Shemaiah、Third Worldなど有名アーティストがふらっと遊びに来たり。各国から色んな価値観の旅人が訪れたり。大学はノイローゼになるくらい超忙しかったけど、ジャマイカ生活は楽しかったです。


●ジャマイカという特殊な環境に住んで学校に通うということ自体が大変なことではあると思うんですけど、どういう悩みを持っていたんですか?

KON RYU:不自由なく暮らす日本の生活と比べてジャマイカでは生きる為にサバイブしている人が多い。そういう国なのに、僕は何も知らない日本人のノリで行ったのでジャマイカ人と全然フィットしなかったんです(苦笑)


●どうフィットしなかったんですか?
KON RYU:
「やる気」っていうんですかね。モチベーションの違いからくる話の合わなさ。音楽をプレイすることに対するやる気の違い、「成功したい」という意気込みが彼らはすごかった。


ジャマイカの若い子たちや、そこの学生は「早く一人前の大人として認められたい」っていう気持ちがあるように思いました。「自分で生きていく」、「自分はこれで生活していく」とか、そういう気持ちが僕には無かったんだなと。その気持ちがジャマイカにいたときは分からなかったんですが、日本に帰ってきて気付いたっすね。自分の考え方と彼らの考え方が全く違っていたんだなっていう。目線が違う。


●気づけたことで、音楽に対するモチベーション、心境の変化はありましたか?
KON RYU:
ありましたね。音楽への熱量は確実に変わりました。
コロナで日本に戻ってきてからのこの一年は音楽家としても人間としても自立していかなくちゃいけない過程でした。


まず親に頼るところからの脱却(笑)すごく初歩的なことだと思うんですけど、確実に自分の課題でした。父との関係性、エンジニア、プロデューサー、バンドマンとしてのKON KENと、親父としてのKON KENを混同していたところがありました。スタジオに入って、彼がエンジニアをやって僕が歌を歌うときに「子の甘え」は必要ないんです。あると甘えが出てブレるし、それなりになっちゃうんで。アーティストとプロデューサーと音楽家同士っていう関係を大事にやっていきたいと思ってます。


●自立していくKON RYU君を見ているお父様のご反応は?
KON RYU:
多分喜んでいると思います。以前はうざがられてましたから。怒られっぱなしで(笑)でも最近は”Youth of Roots"というのが強力になっていくのを感じるようになってきています。

S__6234128.jpg

●Youth of Rootsの歌詞中には「洗脳」という言葉がよく出てきますが、具体的に教えて頂きたいです。

KON RYU:まず小学校から始まる9年間の義務教育。ほとんどの日本人がその過程を受けていると思うんですけど、その中で先生が生徒に優劣をつける。与えられた課題を出来る人が褒められて、出来ない人は烙印を押される。偏差値とかがそれですよね。

それは単純に偏った不自由な世界観ですよね。決めつけてくるし、偏っていると思います。それに合う人はいいけど、合わなくて反抗したり、単に勉強ができないっていうだけで、用意されたその勝手な思惑から将来の心配までされてしまうんです。かわいそうですよね。不安を与えて消極的にするんです。子供から、親まで。


なんか小さな箱に入れられていると思いませんか?
日本全体が基本そのノリで動いている。みんな仲良くして「右むけ右!」みたいな。これが僕のいう「洗脳」です。企業や政治家のためのシステム。


出会った人々、年上の人や友達からポジティブな気付きの言葉をもらったり、ラスタマンの歌詞を理解していく中でどんどんニュートラルな考えになれますね。


●義務教育に対して「生き辛さ」を感じたことはありましたか?

KON RYU:いや全然(笑)それまで何も疑わずに部活とか学生生活をがっつりエンジョイしていました。サッカー部で部長任せられたり。


●洗脳されていることに気づいたきっかけを教えてください。
KON RYU:
日本を出てジャマイカへ行ったことがきっかけでした。全く違う文化圏での生活から日本を見た時に違和感を感じました。


●「洗脳」以外にも、歌詞中に「スピリチュアル」や「宇宙」などの精神的なワードがよくでてきていますが、リリックスのイマジネーションはどこから湧いて来ますか?また、普段の生活や心掛けていることなど教えてください。
KON RYU:
JAH MUSIC、ラスタの音楽を聴いて自分のマインドをチューニングすることは心がけてるっていうか、好きですね。元気になるし。そこからイメージが湧いてくる感じです。

色んな曲ありますけど、「I&I(アヤナイ)」という視点、感謝、祈り。そこにチューニングしていきます。そこから日本の現状や流れを意識して、言葉を選んで曲を書いています。


●「I&I」について教えてください。
KON RYU:
「僕たちは、全て一つのところから来ているんだよ」っていうことで、他人も自分のことのように愛すということ。
「I&I」は全てであり、最初の一つ。自分であり、みんなであるという意味です。「You」の概念はないです。


●こういう精神的な概念や事実を理解して、それを表現するということがとても素晴らしく、尊敬しています。
しかし、JAH MUSICのメッセージを理解するには単純な視点では難しい部分もあるかと思います。
KON RYU:
物質的に満たされている今、精神的な事柄を重要視しない傾向にあるので、そういった曲はどうしても理解できない人もいるんだろうなと思っています。

JAH MUSICはサヴァイヴして生きていく為に必要な知恵と幸せの本質を教えてくれるとKON KENは言っています。彼は別にラスタファリアンでは無いけれど、ラスタには日本で見る他の宗教のようなお金を貢がせるようなバビロン的な思考が全く無いので解せるようなことを言っていました。


それこそ宇宙的という感じですよね。ただ全て存在しているだけ。その権利は生まれた時から平等にあるんだという。ならば人として幸せになる方法を掴まなければいけない。KON KEN seh dat.

神秘的な体験をちゃんと信じることや、色々経験が必要なんじゃないかなと思っています。


●「I&I」を実感する瞬間を教えてください。

KON RYU:実際、朝起きたときとか太陽の陽を浴びたときだったり、夜には月もでることだったり。星を見上げたり、自分が生きていること、シンプルな事をリアルに感じれる日は調子いいですね。リアルに"Blessing"を感じれる感性が鈍ってないかとか。ワンチェック。


●歌詞中によく出てくる「バビロン」についても、具体的に何を指しているのか教えてください。

KON RYU:洗脳を仕掛けてコントロールしてくる人間側のものです。そして、「I&I」の視点から見たときにそこから反するものです。

闇側って感じですね。権力とか悪魔とかバッドマインドとか、強力にネガティブに渦巻くもの。


●現在、世界的に社会の構造や世の中の価値観が大きく変わりつつある時代に生きている私たちですが、バビロンに支配されないためにどう生きていくべきでしょうか。
KON RYU:「レゲエ・ミュージック」を聴いて生きていく(笑)

だから僕たちもレゲエをやっているし。ルーツマン、ラスタマン、レゲエからのメッセージには新しい気づきがすごくありますよね。

レゲエ・ミュージックのリリックスを理解する事がバビロン的マインドに支配されないための一つのパワフルな方法だと知って欲しい。和訳サイトを見たり、解らない英語やパトワ語を和訳してみて歌を理解して楽しんで欲しいですね。リズムは本当に最高だし踊ってる時は間違いなくフリーですよね。


●最後の質問になります。この世の中に対して、レゲエ・アーティストとして伝えたいことは?
KON RYU:
「ユニバーサル・ラブ」。そしてポジティブ・バイブレーションです。

Yow!人生みんなに平等一度きりだから人に優しくJahは見ている One Love!

S__6127663.jpg