interview & text:タカネ
兵庫県は加古川出身のレゲエアーティスト、ONEDERをご存知だろうか。伸びやかでチルな歌声に、アイリーでホッとするメロディ。癒しの効果バツグンの彼の音楽は、どこから、どうやって生まれてきたのだろうか。今回はニューアルバム『そわか』をリリースした彼に、アーティストとしてのはじまりから、一風変わった体験まで、今まで明かされることのなかった自身のパーソナルな部分を語っていただいた。
【ONEDER Profile】
1994年9月19日生まれ、兵庫県加古川市出身のアーティスト。 19歳の終わり頃から音楽活動をスタートさせる。 22歳の冬、勤めていたホテルを退職後、全国各地を渡り歩きながら、現在は兵庫 県神戸市を中心に年齢性別を問わないライブ活動を行っている。 様々な出会いの中で日本の『結い』引き寄せあう事や、Jamaicaの『Rastafari』 愛の教えに感銘を受ける。 彼は自らの感性からなる”神秘的価値観”を表現する新世代artist
●ONEDERさんのレゲエとの出会いはいつですか?
ONEDER:もともとレゲエを聞いていたわけではなくて、ホテルマンをやっていたんです。でも仕事が合わなかったので、何か別のことをしたいと思っていた時に、ラバダブなら歌えるというので、レゲエに入って行きました。
●歌える場所がレゲエの場所だったのが、はじまりなんですね。
ONEDER:ラバダブからレゲエの人たちと知り合って、レゲエを知って行きました。THUNDERくんやAPOLLOくんなんかの有名な人は高校から知っていた感じですけど、そのくらいしか聴いたことなくて、ボブ・マーリーも聴いたことなかったです。聴いていたのはジャスティン・ビーバーとかクリス・ブラウンとか。カラオケでは清水翔太とかを歌ってました。
●ONEDERというお名前は、ご自身の曲の雰囲気にぴったりだと思うのですが、名前の由来は何ですか?
ONEDER:初めは本名でやっていたんですが、半年もしないうちに、名前を考えなおそうとなりました。そこでワンダーというのが浮かんで、普通のワンダーだけだと面白くないので、数字のONEにしました。きちんとした由来は覚えてませんが、「WONDER」には「不思議な」とか「魅了する」っていう意味があるから、そこはいいなと思ってます。「ONE」には「唯一無二」って意味もあるし、名前を変えてから、自分の曲が広まっていったので、その名前が自分に合っているんだと思います。
●キャリアとしてはどのくらいなんですか?
ONEDER:歌いだしてから6年ぐらいです。歌い始めてから2年ぐらいがかなりキツかったですね。仕事も辞めて収入も0やし、誰も俺のことなんか知らなくて、どうしようって。仕事を辞めたものの、全く誰にも名前を知られてない状態だったので。
●なるほど。仕事を辞めてそれからどうしたんですか?
ONEDER:お金も家もないし、「どこかに行かないとヤバイな。」とまず思いました。最初は知り合いのスタジオに泊まりに行かせてもらってたんですけど、そこで「これからどうしよう。」と悩んでいたら、その知り合いに「こんな感じでいろんなところのスタジオに行けば、ライブも呼んでくれるんじゃないか?」って言ってもらって。また別の知り合いにヒッチハイクのやり方も教えてもらったので、それからいろんな所を回りはじめました。
●2年間は全国を回ったんですか?
ONEDER:全国ではないんですけど、いろんな所に行きました。特に横浜がとても好きで、一回行ったら2か月くらいいましたね。横浜のいいところは、人が最後まで遊んでくれるところなんです。いきなり行っても、「俺は今日駄目だけど、別のやつ紹介するよ。」って他の人を紹介してくれたりもしました。俺がお金なかったのもわかってくれてるので、行ったら全部の面倒を見てくれて、すごい人があったかいですね。港町やし中華街もあって、神戸にも似てるところがあります。特に横浜にいるレゲエアーティストのAnsaくんは兄貴やと思ってますね。
●2年が終わって『タビノオワリ』というアルバムを出されたということだったんですけど、このアルバムはどういうテーマだったんですか?
ONEDER:2年の旅を終えるということで、お世話になった人に「俺何とか行けそうです。ありがとうございました。」っていう気持ちを込めました。ファーストアルバムなので、周りからは「旅のはじまり」じゃないの?って言われるんですけど、2年の旅が終わりましたっていうので、『タビノオワリ』というタイトルにしました。2年間の旅を詰めたアルバムですね。
●2年間の旅の中でいちばん印象に残っている出来事ってありますか?
ONEDER:夜中にトラックのおっちゃんにサービスエリアまで送ってもらったんですけど、降りたサービスエリアには全く車が止まってなくて。夜中やしバリ寒いし、入るところもなかったんはかなりキツかったですね。朝までいないといけなくて(笑)
●それはきつかったですね(笑)ファーストアルバムのご反応はいかがでしたか?
ONEDER:めっちゃよかったですね。知らない土地で自分の名前を知ってくれてる人がいたり、曲をいいって言ってもらう現象が起きました。
●旅での出会いで制作したアルバムで、また新たな人との「縁」が生まれたのですね。プロフィールには「結」に感銘を受けていると書いていますが、これはどういうものですか?
ONEDER:ごく自然なもので常に起きているものです。グループや派閥ができるのも当たり前なので、それを悪い風には思いません。僕も似た人と居る時が多いし楽ですね。
●旅を終えてからアーティストとしてはどういう歩みをしてこられたんですか?
ONEDER:そこからはライブをしたりとか、制作をしたりとか。ツアーみたいなこともやったことあります。大阪、滋賀、奈良、加古川、神戸、横浜の6か所を回りました。
●その後はどちらにお住まいなんですか?
ONEDER:神戸か尼崎にいることが多かったですね。今は大阪の富田林なんですけど。
みんなで住んだら安いし、音も出せたらいいなっていうので、音楽をやるつもりでみんなで一軒家借りました。セレクター2人、トラックメーカー1人、ベーシスト1人、後1人裏方をやってくれている人と僕の6人で住んでます。まだ住み始めて1年も経っていないんですけど。
●本当に音楽のための生活ですね。楽曲を制作するうえでいちばん大事にしていることって何ですか?
ONEDER:いいなって思う曲は、歌詞が素直な曲ですね。俺も好きやしみんなもいいって言ってくれるし。それは意識していることです。
●なるほど。影響を受けたアーティストっていますか?
ONEDER:Rickie Gですね。あとローホーくん。メッセージで言えば、ボブ・マーリーです。
●ボブ・マーリーとの出会いはいつごろですか?
ONEDER:しっかり聴いたのは20歳の時です。先輩のギタリストから「Redemption song」という曲を教えてもらって感動しました。「解放」というテーマに軽いカルチャーショックを受けたと思います。
●今後、歌っていきたいことはありますか?
ONEDER:「今日飲んだコーヒーがうまかった」とか身近なことに目を向けさせたいですね。大きいバビロンやシステムに関しての歌ではなくて、あの映画を見て、誰かと遊びに行って、いつもと違うこういう話をしてくれて嬉しかったみたいな。そんなのがいいなって今は思っています。簡単なことで幸せなことがいいというか。
●なるほど。今まで作ってきた曲の中で思い入れのある曲を教えてください。
ONEDER:「蓮の花」と「奇跡」はお気に入りですね。「蓮の花」は6年くらい前に書いたんですけど、今は書かない内容を書いているから、本当に降ってきたような曲です。「奇跡」は子供達に向けた曲です。この曲を作った時、「歌詞をたくさん入れたくないな」って思ってたんです。たくさんあったらどれをリスナーが拾ったらいいのかわからないと思って。だから簡単な言葉で短くまとめていい曲を作ろうと。「いつか好きな人ができて、よかったね出会うことができて。」という内容の曲です。自分のアーティストとしての種類がホワンとしてる癒し系なので、制作の時も「メッセージも柔らかくする」っていう意識はしてますね。
●「メッセージも柔らかく」と言うのは、プロフィールにもある「神秘的価値観」と何かつながりがあるんですか?
ONEDER:「神秘的価値観」とかっこいい言い方になってますが、単純に言霊や念を信じている空想家なんだと思います。その方がファンタジーで楽しいです。現実も同じくらい楽しめるものだとは思っていますが。
●確かに、ONEDERさんの曲は空想的でリラックス効果があるような気がします。ではこれからこんな曲を作ってみたい等はありますか?
ONEDER:アコースティックの曲ですね。ってよく言われるんですけど、実はアコースティックの曲がほとんどなくて。アコギとカホンや鈴を使ったミニアルバムなんか作れたらいいですね。
●アコースティックの曲に興味を持ったきっかけはありますか?
ONEDER:神戸のクラブの人がアコギをくれたのがきっかけです。その人が、「これからの時代、自分1人でどこでも歌えなあかんで。」て言ってくれて。アコギで作った曲は自分でコードも選んで作るので、より素直な自分が出ると思いますね。
●では、今回新しくリリースされたアルバム『そわか』のテーマを聞かせてください。
ONEDER:テーマは「尊敬、笑い、感謝」です。タイトルもそこから取ってるんです。「掃除、笑い、感謝」とも言うらしいんですけど、神様の好きな言葉3つらしいです。まず言葉の響きがいいなって。尊敬の次に難しい言葉が来てたら、ガチガチすぎるんですけど、次に来るのが、「笑い」っていうのがまた好きで(笑)。しかも、自分は「蓮の花」っていう曲も歌っていて「そわか」も仏教系のイメージの言葉やし。仏教っぽいのもONEDERらしいって言ってもらって、「そわか」がテーマになりました。
●すごくぴったりのタイトルだと思います。いつ頃決めたのですか?
ONEDER:タイトルは制作の途中に決まりましたね。このアルバムを作ったのがコロナの時期だったので、ライブもないし、自分で曲を作ることくらいしかやることがなくて。だからアルバムを作ろうと思って作ったわけではなくて、コロナの中、メンタルを保つのに、何かしなくちゃっていうので、曲を作り出して、アルバムができました。
●アルバムの中で、特に思い入れのある曲はありますか?
ONEDER:最後の「Live」という曲ですね。コロナでライブもなくなったので、「ライブをやりたいな」って思いを曲にしました。ライブは本当に大事ですね。この曲も「レベル」というよりかは、もう少し身近な感じの内容になってます。
●コロナでかなりイベントも減ってますもんね。ONEDERさん自身の今後の目標はありますか?
ONEDER:いつかワンマンを絶対やりたいですね。やったことがないので。本当はバンドでやりたいんですけどね。本当にめちゃくちゃやりたいです。
●では最後に、レゲエアーティストとして伝えたいことは何ですか?
ONEDER:やっぱり「愛」ですね。伝え方は変えつつ、ボブ・マーリーやジョン・レノンのようなメッセージを伝えていきたいですね。
●ボブ・マーリーやジョン・レノンのようなメッセージとは、具体的にどのようなものですか?
ONEDER:身近な愛ですね。戦争の事や地球環境の事、政治の事、色々と問題はありますが、ミュージシャンがそれを訴えるのは当たり前。これからの時代はボブやジョンと同じように、闘うのではなく、全員で2人の意思を繋いでいきたい。僕は子供達が喜ぶような事や空想、みんなが楽しくなるような事を歌いたいです。
●すでに「愛」に溢れた楽曲でいっぱいですもんね。本日はありがとうございました!